税理士法人同士のM&Aが急増している。売り手は環境変化の波にのまれた「高齢税理士」や税務以外に注力したい税理士たち。その一方で、その状況をチャンスと捉えた30〜40代の税理士「第4世代」といわれる税理士が買い手として物色している。特集『税理士サバイバル』(全10回)の#6では、税理士M&A時代の最前線をレポートする。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)
30〜40代の税理士「第4世代」台頭
サン共同税理士法人などM&Aで勢力拡大
今、税理士業界では「第4世代」の台頭に注目が集まっている。
これまで税理士業界では、税理士法人の序列を崩すような地殻変動が何度か起こってきた。最初は2002年の税理士法改正だ。税理士法人制度が始まり、その前年の広告規制の大幅な緩和も相まって、業界は大きく揺れた。
ここで頭角を現したのが、現在の業界最大手である辻・本郷税理士法人や税理士法人山田&パートナーズ。辻・本郷は地方の中小税理士法人や、個人で開業していた税理士事務所を買収・統合し、一気に拡大路線を突き進んだ。
1980年代後半からコンサルティング会社を立ち上げるなど、早くから多角化していた山田&パートナーズも拡大を進め、大手の一角を占めるようになった。
辻・本郷の創業者である本郷孔洋税理士は45年生まれ、山田&パートナーズの故山田淳一郎税理士は47年生まれ。02年の税理士法改正のときは50代中盤から後半で、腕と経験を兼ね備え、税理士として脂の乗ったタイミングだった。税理士法人の大型化をいち早く進めた「第1世代」のパイオニアたちだ。
その第1世代のならした道をたどるように成長したのが「第2世代」。現在60代中盤から後半。現在も現役バリバリで、税理士法人の創業税理士として組織を率いている者も多い。中小企業を元気にするという理念を掲げる、税理士法人古田土会計の古田土満(土は、正しくは土の右下〈2本の横棒の間〉に丶)公認会計士・税理士などだ。
そして「第3世代」が、現在40代中盤から50代前半の税理士だ。強みはインターネット時代における対応力の高さ。2010年代以降、ウェブマーケティングを駆使して一気に成長した税理士法人も多い。
代表的存在はベンチャーサポート税理士法人の中村真一郎税理士だろう。業界内では「税理士としての腕だけでなく、マネジメント力とマーケティング力は税理士業界一だ」(40代中堅税理士法人代表)と、目標とする税理士は多い。
そして今、新たに台頭しているのが第4世代。現在30代後半から40代前半だ。同業の税理士法人を次々に買収(M&A)し、お笑い界の第7世代のごとく、破竹の勢いで規模拡大を続けている。
その筆頭として名前が挙がるのが、サン共同税理士法人の朝倉歩税理士だ。