A男には「遺留分」がある
しかし、A男には最低限の金額は必ず相続できる権利、遺留分(4分の1)があるため、A男が「やっぱり遺留分は欲しい」と言えば、B美はA男にその金額を渡さなければいけません。
ただ、この遺留分という権利は、A男が納得すれば、母の生前中に放棄させることができるのです。遺留分の放棄は、放棄をする人自らが家庭裁判所で手続きをし、家庭裁判所からの許可を受けて成立するので、A男自らが手続きすることが前提となります。
「一次相続で父の遺産をすべてA男が相続することの交換条件として、母の遺留分を今すぐ放棄すること」
この約束を実際に守らせれば、A男は母の相続時には何も主張できなくなります。ただ遺留分の放棄は、日本全国でも年間に1000件程度しか行われておらず、ポピュラーな制度とは言えません。
家庭裁判所の判断によっては許可されないケースもあるので、弁護士等の専門家を交えて進めたほうがいいかもしれません。
ちなみに、遺留分放棄の手続きは、弁護士以外の専門家でも相談に乗ってくれます。いずれにしても、「次の相続でちゃんと調整しよう」という約束をきちんと守らせるためには、かなりの時間と労力が必要なのです。