組織の中で共有されている暗黙の価値観や習慣、クセ――。組織の中で無意識に共有されている価値観をどのように変えていけばいいのでしょうか。新刊『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』著者の中竹竜二さんが、一橋大学大学院国際企業戦略研究科の楠木建教授に、組織文化の変革のポイントについて、話を聞きました(構成/新田匡央)。

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中竹竜二さん(以下、中竹):インタビューの中編で楠木先生は、変えようがないと思えるような組織文化であっても、あっさりと変わることができるとおっしゃいました(詳細は「楠木建教授が分析「組織文化は意思決定のスピードを高める」」)。そこで今回は、変革の具体的な方法について教えてください。

楠木建教授(以下、楠木):ケース・バイ・ケースですが、組織の中にいる人たちが強烈に反応するものがあるはずなんです。僕は、そこが組織文化の変革のツボだと思っています。

 例えば霞が関の官僚組織も、組織文化が濃いと思います。よく言えば、国家の役に立ちたい人が集まっている。一方で悪い意味での組織文化は、出世に非常にうるさいこと。出世をはばむようなリスクは取らないでしょうし、保身に回る姿勢は強いと思います。

 そんな組織文化の中にいるビジネスパーソンが強烈に反応するのは、「昇進」だと思います。例えば組織のリーダーが、「そんなことやっていたら、ここでは偉くなれないぞ」と言えば、きっと言われた人の言動は変わるはずです。

 つまり組織文化に直接手を突っ込んでいるわけではなく、昇進や評価の基準など、組織文化よりも操作性が高いものに手を加えた結果として、組織文化が変わっていく。ただそれが、組織の中にいる人々が強く反応するものでないと、効かないでしょうね。

中竹:影響力があるものをどうやって選ぶか、ということが大切なのですね。

楠木:給料などをインセンティブにして霞が関の官僚組織を変えようとしても、おそらく変わらないはずです。そもそも、それほどお金に興味がないでしょうから、給料が減ることよりも、偉くなれないほうが嫌だと思うはずです。

中竹:官僚組織の中にいる人たちは、そうした文化に自覚的なんですか。新刊『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』にも書きましたが、組織の中にいる人たちは基本的に自分たちの組織文化を知らないケースが多いように感じます。

楠木:自覚的ではないと思います。ただ、体は反応しますよね。自覚的であればもっと早く変わっているかもしれません。

 組織の中にいる人が当たり前のこととして受け入れていることでないと、組織文化ではありません。だからこそ、外から来る人に意味があるんです。影響力のある意思決定者が外から来ると、メリットもデメリットもありますが、組織文化を見直したり、変えたりするのが、早くなりますよね。

中竹:企業には社外取締役がいますが、この役割の人に組織文化を変革する役割を担ってもらうことはできますか。

楠木:影響力を及ぼせる範囲が取締役のメンバーの中にとどまっているので、会社全体を貫く組織文化を変えることに関して、ほとんどの社外取締役は無力だと思います。

中竹:形の上では組織文化の違和感に気づいたとしても、楠木先生の言う「ツボ」を押せない、ということですね。