思い通りにいかない事実を受け入れること
「立て直す力」は、最近では「レジリエンス」などとも言われ、海外では人材育成や自己認識などの世界でも研究が進んでいます。
ビジネスの世界でも、リーダーや責任者になるなどポジションが上がるほど、思い通りにいかないことは増えていきます。厳しい壁や障害に直面することも多くなります。
思い通りにできないときや調子が崩れたとき、どのように立て直して自分を戻していくのかは、リーダーにとってもチームにとっても重要なテーマとなります。ここで大切なのは、「思い通りにいかないという揺らぎを受け入れること」。これが立て直す力の本質、いわばウィニングカルチャーの要因の一つなのです。
私自身はバレーボールに詳しいわけではありません。それでも試合を観戦していて、JTマーヴェラスの強さに心から感動したのは、ミスをした後の切り替えにありました。
当然、ミスがあれば修正しなくてはなりません。その時にクヨクヨしないことが大切なのです。パっと気持ちを切り替えて次に向かうこと。
人間はどうしても過去の後悔と未来の不安に大半の意識を向けてしまうものです。しかし、JTマーヴェラスにはそれがなかったのです。
今回、JTマーヴェラスは準決勝の大切なシーンで、せっかく点を入れたのにノーカウントになるという、パプニングとも言える事態に直面しました。普通なら、怒りやいらだちの感情が湧き上がるシーンです。
しかしそこで、コートに立つ選手たちは、誰よりも早く気持ちを切り替えて、「次にいこう」と声を掛け合っていたのです。
自分たちがコントロールできるところだけを見つめて、立て直していく。
集中のベクトルを、他者や過去といった思うようにならない事態に向けるのではなく、自分たちに向けて、自分たちがコントロールできる範囲で状況を立て直していきました。外部で起こるすべての事象を素直に受け止め、自分たちのプレーの精度を高めることに集中できたのです。
これが本当の強さです。なぜならそこには勇気が必要だからです。何かと言い訳できる要素をすべて捨てて、前を向くこと。実際、JTマーヴェラスのコート内では「勇気」という掛け声が飛んでいました。
人間は思うように物事が進まないときほど、つい誰かを責めたりしがちです。自分たちがコントロールできない外的要因に執着してしまうものです。
しかし、大切な状況だからこそ自分たちがコントロールできるものに着目すること。それは確実に、自分の中にあるものです。過去ではなく、未来に向けて今、どのように立て直していくのか。崩れることが当たり前だからこそ、どのように立て直していくかという姿勢が勝負のカギを握るのです。
これはきっと、スポーツの世界だけでなく、ビジネスの世界でも、プライベートの世界でも同じではないでしょうか。
思うようにならない現実を受け入れてから「立て直す力」こそ、ウィニングカルチャーに必要な要素である。改めて、JTマーヴェラスの優勝を見て、その重要性を学び直しました。ほかにも、私の最新作『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では、強いチームになるための組織文化の「知り方」や「変え方」についてさまざまな方法をお伝えしています。
あなたも、立て直す力を養ってみませんか。
(本記事は、音声メディア「Voicy」の私のチャンネル「成長に繋がる問いかけコーチング」で2021年2月22日に配信した「立て直す力とは?」を再構成して記事化しました)