強くなるために必要な「オフ・ザ・フィールド」

 いま注目されているのは「オフ・ザ・フィールド」の動向です。

 どんな一流選手でも、体を動かしてその競技に取り組むのは、一日24時間のうち数時間しかありません。それ以外は食事や睡眠、肉体や精神の調子を整えたり、リラックスしたりと、競技以外に多大な時間が割かれています。

 だからこそ、選手のパフォーマンスを上げるには、ピッチの外の「オフ・ザ・フィールド」をどう過ごすのかが重要な意味を持ちます。

 極限まで鍛え、最先端のテクノロジーなどを活用して戦術や戦略を練ったうえで、オフ・ザ・フィールドに目を配り、その時間を充実させることが大切だと考えられるようになっているのです。

 実際、私がラグビーU20日本代表の監督を務めていたときも、遠征や合宿で重視したのは、食事や睡眠、休息やレクリエーションといったオフ・ザ・フィールドの時間の使い方でした。

 たとえばスマートフォン。若い選手はどうしても空き時間にスマホを触りたがります。しかしスマホに没頭すると、仲間たちと交流する時間が限られてしまいます。

 そこでミーティングルームや食堂など、みんなが集まるパブリックスペースではスマホを触らないように決めました。代わりに仲間と直接、会話をすることを推奨したのです。

「知らない仲間と話すのは、最初は緊張するかもしれない。でも勇気を持って声をかけてみたら、きっといいチームメイトになれる。チャレンジしてみよう」

 オフ・ザ・フィールドで強くなったつながりが、オン・ザ・フィールドでいざというときのコミュニケーションに役立ちます。ひいてはオフ・ザ・フィールドの行動が、試合の成果に強く影響を及ぼすと選手たちに伝えました。

 すると遠征や合宿のあとのレポートで、選手たちはこんな感想をまとめてくれました。

「オフ・ザ・フィールドがしっかりしていれば、試合もうまくいくと確信した」

「今回の遠征でオン・ザ・フィールドの部分が順調に成長できたのは、オフ・ザ・フィールドの部分がしっかりしたからだと思った」

 U20日本代表だけではありません。ラグビーの強豪国であるニュージーランド代表のオールブラックスも、オン・ザ・フィールドだけでなく、オフ・ザ・フィールドを重視しています。

「Better People Make Better All Blacks」

 人として成長すればチームも成長する、という考え方を掲げているのです。

 世界各国、どんなスポーツでも強いチームになるほど、競技には直接関係のないオフ・ザ・フィールドを大事にしています。

 これは企業経営や組織運営、チームマネジメントもまったく同じです。

 目に見える成果を生みだすには、オン・ザ・フィールドの動きだけではなく、オフ・ザ・フィールドにも目を配る必要があります。

 そして、オン・ザ・フィールドとオフ・ザ・フィールド、両方の土台となる組織文化に目を向けることが大切なのです。

(続きは2021年3月10日公開予定)

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