「お金持ちになるにはどうしたらいいのか」という疑問にこの連載ではいろんな角度から答えを示していきます。お金持ちなら誰でも知っている秘密を明かしていきます。
その疑問の答えにたどり着くには「お金」「経済」「投資」「複利」、そして「価値」について知っておく必要があります。少し難しい話も出てきますが、今は完全にわからなくても大丈夫です。
資本主義の仕組みについても、詳しく解説していきます。なぜなら、資本主義の世界では、資本主義をよく知っている人が勝つに決まっているからです。
今後の答えのない時代において、どのように考えながら生きていけばいいのか、ということもお話ししていきたいと思います。さあ、始めましょう!
(もっと詳しく知りたい人は、3月9日発売の『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)を読んでください)

未来 過去
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「有能の境界」を意識して生きる

世界的投資家のウォーレン・バフェット氏は、投資銘柄の選別において、自分が理解できるビジネスのみに集中し、わからないものには投資しません。ところが、1999年から2000年にかけて、インターネットバブルというものが世界中で起こりました。まだインターネットが普及し始めたころに、インターネット関連銘柄だというだけで、全く利益を上げていないような企業であっても、ものすごく高い株価が付きました。投資家の買いが殺到したんですね。

当時のインターネット企業のビジネスモデルが理解できなかったバフェット氏は、そのような企業に一切投資しませんでした。そのような企業群の株価がどんどん上昇する中で、取り残されたバフェット氏は「ついにバフェットも終わったな」と数年間も非難されたのです。

しかし、2000年12月にはその種の企業がまともな利益を叩き出せないことが明らかになる中で、ネット企業の株価は暴落を始めます。結局は投資の神様バフェット氏の見立てが正しいことが判明したのでした。バフェット氏は、自分の能力の範囲内(Circle of competence)に集中することで、このインターネットバブルに捕まらなかったのです。

バフェット氏の「Circle of Competence」という考え方は、人生における投資にもあてはまると思います。私たちの身の周りには自分ではどうにもならないものがたくさん存在します。たとえば、日照りが続いているからといって、雨乞いの踊りをしても科学的にはどうにもならないことを私たちは知っています。またエレベーターがなかなか来ないからといって、ボタンを連打しても速く来るわけではありません。半面、3ヵ月後の卓球の試合に備えてできることはたくさんあるでしょう。

このように自分が頑張ってもどうにもならないことと、自分が影響を与えられることとの間には、「主体性」を切り口として明確に線を引くことができます。この境界線のことを私は「有能の境界」と呼びますが、この境界を意識することが、気持ちよく生きていくためにはとても重要です。自分ではどうしようもないことに気をもんでも何も変わらないし、時間の無駄です。

図表

横軸に「将来」「過去」を、縦軸に「自分」「自分以外」をとると、すべての事象は4象限に分けることができます。

自分以外の過去の出来事(左下の象限)
たとえば、芸能人の不倫ネタなどがこれに当たります。これはもう、完全にどうでも良いことです。人生のうちでほんの数秒でも時間を使わないことをお勧めします。

自分に関わる過去の出来事(左上の象限)
恋人に振られた、試合に負けた、などの出来事がこれに該当します。起きてしまった過去の事実はどうしようもありません。これを将来に活かせるかどうかは自分次第ですが、起こってしまったことをクヨクヨしても後の祭りです。切り替えましょう。

自分以外の将来(右下の象限)
他人に影響を及ぼすことは可能かもしれませんが、他人が考えていることをコントロールすることは不可能です。たとえどんなに親しい友人であったとしても他人であって、その人の人生はあなたのものではありません。たとえ家族でも本当に突き詰めれば他人です。現実的には、この象限との向き合い方が一番難しいところではあります。

自分に関わる将来(右上の象限)
これこそが自らの才能・時間・お金という自分の資産を全集中投下するべきところです。ここに集中して投資することによって文字通り人生が大きく変わります。特に若い君たちの才能はこれからいかようにも伸びていきます。一日中運動していたとしても、徹夜して勉強したとしても、少し休めばケロッと回復します。インプットしたものをどんどん吸収できるのは若いうちだけです。

自分自身という道具、クワを研ぎ澄まして、どんどん人生という土壌を耕し、豊かな作物を収穫する、これこそが自分に投資するということの意味なのです。世の中の大半の問題は、自分がコントロールできない分野にまで、関心を広げてしまうことから起こるのです。

「有能の境界」という考え方は、人生における優先順位を考える上で役に立つと思います。コントロールできるのは自分の将来のみです。これに気づくことなく、自分自身ではどうしようもない境界の外にある物事に足を取られ、過去に引きずられ、他人(親や教師、先輩、苦手な人)に言われるままの人生を生きれば、相当の確率で失敗します。

仮に成功できたとしても、それは自分の人生ではありません。他人の人生を生きるのはまっぴらごめんではありませんか。自分自身の人生のオーナーになりましょう。

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奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『教養としての投資『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)など。