投資キャッシュフローがプラスの場合、
何を売ったかをよく調べる必要がある

カノン イケイケの経営者なら借金してドンと投資するってことですか。父なんか、毎年機械を買う割には、投資金額はわずかです。

林教授 いくら積極的な考えの経営者であっても、緻密な戦略がなければ投資はうまくはいかない。君のお父さんは堅実なんだよ。

カノン うーん、どうでしょうか? でも、経営って頭を使う仕事なんですね。

林教授 もちろん。常に将来のことを考えていなくては務まらない仕事だ。

カノン 先生、質問ですけど。投資キャッシュフローはいつもマイナスですか。プラスの場合もあるのでしょうか?

林教授 投資には現金の支出がつきものだから、ほとんどのケースはマイナスだ。だがプラスになることもある。何らかの事情で固定資産を売却して現金に変えれば、投資キャッシュフローはプラスになる。

カノン それって、投資した株式を売った場合ですか?

林教授 株式だけじゃない。特に注意すべきは固定資産を売却した時だ。固定資産は現金製造機だよね。使えない機械設備を売るのなら問題ない。だが、お金を生んでいる現金製造機を売ってしまうのは問題だ。

カノン そんな事ってあるのでしょうか?

林教授 買掛金を決済できなくなった時、あるいは借入金を返せなくなった時、一番高く売れるのは、お金を生んでいる現金製造機だ。

カノン お腹がペコペコの人が、我慢できなくて金の卵を生むニワトリを食べてしまうようなものですね。

林教授 いいたとえだね。その通りだよ。だから、投資キャッシュフローがプラスの場合、何を売ったかをよく調べる必要がある。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。