今回の研究で示された結果は、魚の摂取が心臓の健康に良いという因果関係を証明するものではなく、心血管疾患が既にある人の魚摂取量と、死亡や健康障害のリスクとの関連を示したにとどまる。Mente氏によると、魚摂取による心臓へのメリットは、主にオメガ3脂肪酸を多く含む魚、例えばニシン、サバ、サケ、マグロ、イワシなどで見られ、これら以外のオメガ3脂肪酸をあまり含まない魚は、心臓に対して良くも悪くもないという。
Mente氏らは、心血管疾患の病歴がある約5万2,000人を含む、4件の国際コホート研究のデータ(対象者数合計19万1,558人)を統合して解析した。その結果から、「メリットをもたらすと思われるのは、オメガ3サプリメントではなくて、魚そのものだ」と述べている。「中性脂肪の高い人に対するオメガ3サプリメントの有用性が報告されているが、それにはかなりの高用量を摂取する必要がある。少量のオメガ3サプリメントを用いた研究では、メリットはほぼ全く認められていない」とのことだ。
今回の論文の付随論評を執筆した米タフツ大学のDariush Mozaffarian氏は、「これまで行われてきた研究は、いずれも決定的な結論を得るに至っていない。心臓の健康に対する魚摂取のメリットに関して、いまだ議論が尽きない」と語る。同氏によると、研究結果の不一致は、魚の種類、摂取量、調理方法、調査対象の違いによって生じている可能性があるという。そのような指摘をした上で同氏は、「油を使わずに調理されたオメガ3脂肪酸の多い魚は、おそらく大きなメリットがあるだろう」と述べている。
一方、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのSamantha Heller氏は、「魚以外の食べ物も、人々の健康、そして海洋資源保護の観点から良い選択肢となり得る」と話す。具体的には、「赤肉や加工肉の代替として魚を食べるのであれば、豆類や全粒穀物、小麦グルテンタンパク質(セイタン)などの植物性食品を食べるのも良い」と解説。同氏によると、「多くの研究から、植物性食品が豊富な食事は、肥満、2型糖尿病、心血管疾患、認知機能低下、一部のがんなど、多くの疾患のリスク低下と関連することが明らかになっている」という。(HealthDay News 2021年3月9日)
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