今道:たとえば、「大分県の魅力はどのようなところにあるか、あなたの考えを述べなさい」という問題があるとします。

──はい。大分県。

今道:この問いに対して、

「文化、歴史、食べ物、自然の風景、どれも魅力に溢れた素晴らしい場所です。」

 というようなことを書く人がいます。

 これを読んで「大分って、こういうところなんだな」と想像できますか?

──いや……できないです。

今道:つまり、文章を書く段階で「これを読んだ人は、どう感じるかな?」ということが全然イメージできていないんです。

 一方、こちらの解答はどうでしょうか。

大分県の一番の魅力は温泉です。別府、由布院には3000以上の源泉があり、別府湾の夜景を一望できる温泉もあります。

──夜景の映像が浮かびました。温泉に行きたいです。

今道:少なくとも、読む人のイメージが膨らみますよね。

 つまり「具体的に書く」ためには「いかにして、読む人にイメージを膨らませてもらうか」を意識すること大事です。固有名詞や数字を入れる、あるいは、視覚、聴覚、触覚、味覚などに訴える描写をすることで、文章は具体的になっていきます。

具体的でない文章には、「ムダな言葉」が多い

──「具体的に書けない人」には、そのほかにどんな特徴がありますか?

今道:「具体的に書けない」とつながっていないようでつながっているのが「ムダな言葉が多い」という問題です。

 そもそも「具体的に書かなきゃいけない」という思いがあったら、余計なことを書いている余裕なんてないはずなんです。「書くこと」がはっきりしていないからこそ、どうでもいい装飾をつけたり、ちょっとでも字数を稼ごうとしてムダなことを書いてしまう。

──たとえば、どんな「ムダな言葉」をつけてしまうんでしょうか?

今道:たとえば「代理出産についてどう思うか?」という出題があったとします。

──語るのが難しいテーマですね。

今道:まさに。難しいテーマで起こりがちなのです。

 たとえば、冒頭で「代理出産の是非というものについて考えるにあたっては……」と書いてみたり「さまざまな視点で捉え、多様な意見を踏まえていかなければならないのだが……」というようなことを書いてしまう。

 難しいテーマであることは出題者も承知しているし、文字数を稼ぎたい気持ちもわかりますが、これだけの文字数を使って、結局何も論じていません。具体的でないだけでなく、自分の論に入ってさえいない。こうしたムダを省いていくだけでも、文章は読みやすくなります。

──文章に限らず、話をするときでも、ムダな言葉を減らすのは大事なように感じます。そのあたりについて、NHKのアナウンサーでもあった今道さんはどのように考えていますか?

今道:話す場合は、相手を引きつけるためとか、アイスブレイクの意味合いで、ちょっとしたジョークを入れたり、雑談から入る方がいい場面もあると思います。

 とはいえ、会議で報告をするとか、限られた時間で印象や感想を述べるような場面では、ムダを省いて簡潔に話すことは大事です。それができない人は、やっぱり「伝えるべきことは何か」が頭のなかで定まっていないのです。

「これとこれを話す」と決まっていれば、自ずと「こういう順番で話した方がわかりやすい」「余計なことを言っていると時間がなくなる」と考えるようになります。

──こうして直接お話を聞いていても、『落とされない小論文』を読んでいても、今道さんの言葉にはムダがないですね。

今道:昔の職業柄「時間内にこれを伝えるには、どうすべきか」という意識は常に働いているかもしれませんね。文章もあまり長くはならないですね。「もっといろいろ書いたほうがよかったかな」と思って、後で付け足すことはありますけど……。

「もっと具体的に書け!」と言われなくなる文章の書き方『落とされない小論文』では、「低評価の解答例」と「高評価の解答例」を対比させてポイントを解説している。

──『落とされない小論文』は、短く、要点がわかりやすく書いてあるというのも、この本がヒットしている大きな要因だと思います。この本は200ページ弱ですけど、後半80ページは試験別の「頻出テーマ」が書いてあるので、実質120ページの中に「小論文対策のポイント」が凝縮されていますよね。そこを読めば、文章力がアップするという効率の良さは本当に素晴らしいと思います。

今道:小論文が苦手な人の多くは文章を読むことにも苦手意識があるので、分厚い本は、それだけで嫌になってしまうだろうと思うんです。そういう意味でもこの本は、簡潔にポイントを絞って書くことを意識しています。

【大好評連載】
第1回 この小論文対策本だけ、なぜ異例の大ヒットなのか?
第2回「文章のわかりやすさ」を決める3大要素

「もっと具体的に書け!」と言われなくなる文章の書き方