象印マホービンが、中国家電大手のギャランツと新商品開発で業務提携した。三洋電機や東芝の白物家電など、業績不振に陥った日本のメーカーが中国企業の買収ターゲットとなったケースは多々あるが、今回の提携には、より洗練された中国企業のしたたかなパートナーシップ戦略が垣間見える。特集『暗闘 企業買収の新常識』(全8回)の#4で、それを解剖する。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
株主総会の対立から1年で一転
象印&ギャランツ提携の舞台裏
「象印の技術力やブランド力という強みを、中国・東南アジア・北米を中心としたグローバル市場において生かすことができず、成長機会を十分に捉えきれていない」
2020年2月、象印マホービンの定時株主総会で、中国家電大手ギャランツ創業家の投資ファンドが、取締役の選任を求めて株主提案を行った。
象印は近年、減収減益が続く。有効な成長戦略を打ち出せずにいた象印の経営陣に、13.5%の株式を保有する筆頭株主の中国ファンドが、取締役選任を通じて「海外事業の拡大」と「ガバナンス強化」を求めたわけだ。
象印創業家の市川典男社長ら経営陣はこれに反対し、ファンドの提案は総会で否決される結果に終わった。
だが、それから約1年後の21年3月。象印とギャランツは、家電製品の共同開発契約を結ぶことになる。
ギャランツの株式保有から業務提携に至る一連の経緯には、中国企業の新たな戦略の一端が垣間見える。