車載半導体が不足する以前から
世界の争奪戦は始まっていた

 半導体を“産業のコメ”とは、先人はよく言ったものだ。車載半導体の不足がここまで深刻化する前から、主要国・地域による半導体の囲い込みは始まっていた。

 米中対立の高まりを境に、主要国・地域は半導体産業をハイテク覇権の対象として、かつ軍事転用可能な機微技術の対象とみなし、自陣で囲い込む傾向が強まっていた。あるいは、同盟国と共に強靱なグローバル・サプライチェーンを構築する動きが加速していた。

 日米が誘致合戦を繰り広げる世界最大のファウンドリー(製造受託企業)、台湾積体電路製造(TSMC)が売れっ子になっているのもそのためだ。すでに、地球規模での半導体「強奪バトル」が始まっていたのだ。

 国内半導体メーカーにかつて世界一を誇った輝きはないものの、日本の部材メーカーの国際競争力は高く、世界で半導体争奪戦が繰り広げられる中で、重要な“交渉材料”となり得る。

 昨年、世界の潮流は、環境第一主義、脱炭素へと完全にシフトした。

 19年に「グリーンディール」を掲げた欧州を筆頭に、環境負荷の低減と経済成長をセットに自国・地域の発展をもくろむ「グリーン経済戦争」が勃発している。

 その主戦場となるのが、電気自動車(EV)、電池、半導体だ。これら三大産業のサプライチェーンを構築するために、激しい国家間競争が繰り広げられている。

 半導体に続いて主要国・地域でサプライチェーンによる囲い込みが始まっているのが電池だ。世界的なEVシフトにより、EVの性能を左右する基幹デバイスとして、電池の重要性が高まっている。特にEV・電池産業の育成で猛チャージをかけているのが欧州だ。