集中力が落ちた。
あの頃は、もっと没頭できたのに――
私たちは今、スマホやPCに1日平均11時間を費やしていたり、リモートワークによる働き方の変化に追われていたりします。
「人のパフォーマンスを可視化するメガネ型デバイス JINS MEME」「世界で一番集中できる空間 Think Lab」などを手掛けてきた井上一鷹氏の著書『深い集中を取り戻せ』では、集中のプロとして、「これからどのように働けばいいのか」「どうやってパフォーマンスをあげるのか」を語ります。
脳科学的に、「やらされ仕事は4ヵ月しか続かないけれど、やりたいことは4年続く」と言われます。あなたが、夢中で何かに没頭できた体験。やらされ仕事ではなく、自らやってみようと思えたこと。何が原因かわからないけど、いつの間にか、『深い集中』が失われたすべての人へ、ノウハウをお伝えします。
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誰もが「集中」のことを考えた瞬間
「日本のオフィスワーカーは、非効率的で生産性が低い」
そのような議論は、コロナ騒動が起こる遥か前から始まっていました。
「働き方改革」が叫ばれ、リモートワークの推進や、ムダな会議の削減など、やるべき課題は出揃っていました。
そして、2020年、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、緊急事態宣言が発令されました。多くの企業が、ようやく重い腰をあげ、リモートワークを取り入れました。
リモートワークに対する各人の反応が大きくズレたのは、「家族構成(横軸)」と「仕事へのスタンス(縦軸)」です。
次の図のように、ポジティブとネガティブの真逆に分かれました。
たとえば、私は左上のゾーンにいるので、よいことしかありませんでしたが、多くの人をヒアリングすると、「共働きで、お互い在宅勤務で、育児あり(緊急事態宣言で保育園は休園)」の人の悩みは本当に深刻でした。
実際に、私たちが測定した結果でも、この仮説通りの結果が出ました。
それが、次の図です。
この数値は、JINS MEMEが測定した「集中している時間の長さ」が実際の仕事時間のうち、どの程度の割合になっているかを表したデータです。
オフィスなどの職場では、50%程度になるのがこれまでの統計データでわかっています。
この実験では、「環境よい×単身」の私は、65~85%という結果です。つまり、もはやオフィスに行く必要はまったくないレベルです。
また、「環境悪い×単身」「環境よい×夫婦」であれば、オフィスとほぼ同等レベルで集中できていました。
問題なのは、「環境悪い×夫婦」「環境悪い×育児あり」の領域です。
こちらに関しては、完全に仕事に支障が出るレベルの集中度であると、計測データでわかってしまいました。
環境が生み出す8つの悩み
いずれにしても、「環境のよさ」を作り出すことは必要になってきます。
そこで重要なのが、「環境整備の度合い」です。
次の図は、横軸が個人と環境、縦軸がフィジカルとメンタルを取り、それぞれに代表的な悩みを紹介しています。
いくら個人の力で仕事モードになれたとしても、環境についての「同じ姿勢による疲れ」「リモート会議疲れ」などがあれば、集中は乱されます。
照明や家庭環境が整っていても、同じ部屋で同じ景色だと、「クリエイティブになりにくい」という悩みも出てきます。
深く集中するためには、何か1つを改善すればいいわけではなく、さまざまな面から対処しなければならないのがわかっていただけることでしょう。
緊急事態宣言によるリモートワークを経験した人なら、どれかは当てはまる課題なのではないでしょうか。
以上、環境や家族構成に関する課題は、重要で、かつ深い問題を抱えていることがわかっていただけたでしょう。
株式会社ジンズ執行役員 事業戦略本部エグゼクティブディレクター 兼 株式会社Think Lab取締役
NewsPicksプロピッカー(キャリア)。
大学卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事後、ジンズに入社。商品企画部、JINS MEME事業部、Think Labプロジェクト兼任。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。
著書『深い集中を取り戻せ』(ダイヤモンド社)が好評発売中。