大型オフィス型のツートップである、日本ビルファンド、ジャパンリアルエステイトですね。昨年は中堅オフィス銘柄のリバウンドを推奨した時期もありましたが、今は直球勝負がいいと考えています。
大型オフィス銘柄は物件クオリティが高く、流動性も担保されています。その分、以前は分配金利回りが2.5%程度と低く、機関投資家向けの銘柄でした。
ところが、足元は中堅オフィス型との利回り格差が歴史的に小さい状況です。コロナ前は分配金利回りに0.5~0.6%の差がありましたが、4月上旬には0.2%程度にまで縮小しました。利回り差が小さいのであれば、大型オフィスに投資妙味があります。
――絶好調の物流型ですが、過熱感や死角はないですか。
EC市場の拡大は大きなトレンドですから、毎年5%程度の増配は継続するとみています。増配に比例した年間5%の株価上昇と分配金を合わせて、年間7~8%程度のリターンが期待できるのではないでしょうか。
物流型は昨年後半に株価の調整があり、再び買いやすい水準になっています。景気変動に強いといわれる住宅型よりも足元では安定感があり、物件取得での外部成長も期待できます。
――ホテルはどうでしょうか。
しんどいですね。コロナ前に比べてマイナス20%水準まで株価は戻ってきており、目先1、2年の回復は織り込み済みです。
ホテル型は宿泊単価と稼働率が重要指標です。例えば、足元のジャパン・ホテル・リートのRevPAR(Revenue Per Available Room、客室1室当たりの売上高)は19年比マイナス70%程度で、回復は鈍い。
同REITの17~18年の分配金利回りは5%程度でした。仮にこの水準が適正だとすると、RevPARはマイナス10%程度までの回復を織り込んでいます。
しばらくは分配金も低水準ですから、目先は深追いしない方がいいですね。3、4年後の完全回復を見据えて、どっしり構えて持つならアップサイドは2割程度ありますけれど。
基本はオフィスと物流を半分ずつ
一時的な調整があれば買いの好機
――コロナ禍でオフィスの空室率が上昇、賃料も下がっているのに、どうして不動産マーケットは好調なのでしょうか。
金利が低い、そこが一番ですよね。低金利が続き、海外からの不動産に対する需要が強い。コロナが終われば需要が戻ってくると考える人も多く、正直、不動産価格が安くなる感じではないですよね。
――不動産市場が高止まりしていると、増資をして物件を買っても、利回り向上には寄与しませんよね。
その通りです。投資タイプで異なりますが、REITの平均インプライドキャップレート(IC、株価をベースに算出される投資家の不動産要求利回り)は3.9%程度。つまり、4%以上の利回りの物件を買わないと増配できません。
一方で、実際の不動産市場では都心部のオフィスは3~3.5%程度のキャップレートで取引されています。不動産価格が高騰している今の水準では、増資による物件取得は利回り向上に寄与しません。
仮に増資を実施しても、需給が悪化するだけです。オフィスは物件の売却益を吐き出す状況ですね。
今後、2100ポイントを超えるとICが下がります。株価が上がれば低い資本コストになるので、そこまで我慢をしてからの増資であれば、分配金の増加に寄与できます。
例外は物流型と一部の住宅型。株価が強いため、この状況下でも増資をして物件を取得すれば、分配金を上昇させることができます。
――今後のリスクやネガティブシナリオは。