経済の正常化による分配金の戻りを前提にしているので、コロナの感染拡大が長引いてシナリオが崩れることですね。空室率上昇、賃料減額につながりますから。

――REITに対して、スポンサーから物件を押し付けられがち……というイメージを持つ人もいます。昨年は日本ビルファンドが巨額増資を実施して、築46年の新宿三井ビルを低い利回りで取得しました。

 確かに去年の後半は巨額増資が需給の悪化要因となり、指数の上値を抑えました。ですが、その部分は改善傾向です。日本ビルファンドも足元は物件売却益の計上など、物件入れ替えにかじを切っています。

――個人投資家がポートフォリオを組む場合、どう組み合わせればいいでしょうか。

 基本はオフィス、物流を半分ずつ。長く寝かせられる前提なら、オフィス4割、物流4割に、飛び道具としてホテルを2割程度組み入れるのもいいですね。ただホテルは、目先はリスクが高いので、腰をどっしり据えて完全回復を待つという資金であればOKという感じです。

――REITは利回り商品なので、中長期保有が基本だと思いますが、仮に東証REIT指数が2250ポイントまで上昇したら、利益を確定した方がいいですか。

 利益確定を検討していいと思います。ただし、調整するとは限らないので全額売却せずに、半分程度でいいと思います。

 一方で1800ポイントを下回ったら、売られ過ぎと判断していい。東証REIT指数のNAV(Net Asset Value)倍率1倍が1760ポイントです。日銀もここまで下がってきたら日銀もサポート買いをしてくると思います。

 東証REIT指数のNAV倍率の過去平均は1.2倍です。その意味でも2100ポイントがターゲットになります。

――上昇スピードが速かったので、「調整があったら買いたい……」という個人投資家も多いと思います。

 コロナが極端に悪化しなければ1800ポイント割れは期待しにくいでしょう。買い場を待っても、株価が調整しない可能性もあります。

 2月の時点では金利上昇懸念もありましたが、現在はゼロを基準に変動許容幅を上下共に0.25%ポイント程度と表明しています。0.25%以上に金利が上昇するリスクは後退しました。

 調整があるとすれば、夏場にかけて物件取得のために増資が増加して、それが増配に寄与しなかった場合でしょうか。株価の上昇により、増資をして物件を買いたい発行体は多いですが、増配できない増資は単なる需給悪化で、下押し要因になりますから。

 まずは今の水準で買う。資金に余裕があれば1900ポイントを割れたら追加資金の投入を検討してはどうでしょうか。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata