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カリフォルニア・ゴールドラッシュ

 一八四八年、カリフォルニアで金鉱(金脈)が発見されると、金発見の知らせはたちまちアメリカ全土に広がった。アメリカ国内はもとより海外からもおよそ三〇万人の男女、子どもがカリフォルニアに集まった。この出来事を「カリフォルニア・ゴールドラッシュ」という。

 他の地域でもゴールドラッシュがあったが、カリフォルニアのものがもっとも大規模で有名だ。

 このとき移動してきた三〇万人は、約一五万人は海路から、残りの一五万人は陸路からだった。さらにカリフォルニア・ゴールドラッシュをきっかけに急激な西部開拓が行われた。一八四七年から一八七〇年のあいだに、西部のへき地だったサンフランシスコの人口は五〇〇人から一五万人に急増したのだ。

 こうして、西部開拓の発展にともなって西部と東海岸を結ぶ交通体系も発展をとげる。もっとも大きな出来事は、一八六九年に最初の大陸横断鉄道が開通したことだった。これはアメリカの経済的・政治的統一をもたらした。

 当時は通貨を一定量の金と交換することを保証して通貨の価値を安定させる「金本位制」だった。大量の金によって、金本位制は磐石のものとなり、国際貿易も安定した。

 なお、ゴールドラッシュのとき、金を採る道具は最初はツルハシとシャベルとパンだけだった。これに小砂利を洗い落とすためのゆすり台につけたクレードル(ゆりかご)という、ふるいにかけて砂金を選別する道具が加わった。砂金は水銀に溶かし込んでアマルガムにした。

 その後、クレードルは、電動のトロンメルという回転ふるいになり大型化する。トロンメルに砂金をふくむ砂れきを投入し、水で洗って泥やれきを押し流す。すると、密度の大きな砂金など(磁鉄鉱、スズや鉛などが混じる)が網目から落下して、下に敷いたカーペットにたまっていく。たまった重い粒を、人がふるいにかけて金をより分けるのだ。

 ゴールドラッシュが終わってからも金の回収は続けられた。河底や砂州に残った金を採るためのドレッジャーと呼ばれる浚渫船は、巻上機でベルトに取りつけたいくつもの鉄バケツを河底に沿って引きずっては、採取した泥をふるいにかける。

 私は、テレビのディスカバリーチャンネルで、「ゴールド・ラッシュ」という番組をシーズン一からずっと見てきた。アラスカなどの過酷な地を舞台に、金の採掘で一獲千金を狙う人々を追ったリアリティショーで、トロンメルや古いドレッジャーを使った砂金採りが登場した。

 採金の技術は、カリフォルニア・ゴールドラッシュ時代と基本的に変わっていないのだろう。

(※本原稿は『世界史は化学でできている』からの抜粋です)

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