集中の超プロが「見えるところにカレンダーを貼ってはいけない」と教えるワケPhoto: Adobe Stock

集中力が落ちた。
あの頃は、もっと没頭できたのに──

私たちは今、スマホやPCに1日平均11時間を費やしていたり、リモートワークによる働き方の変化に追われていたりします。
「人のパフォーマンスを可視化するメガネ型デバイス JINS MEME」「世界で一番集中できる空間 Think Lab」などを手掛けてきた井上一鷹氏の著書『深い集中を取り戻せ』では、集中のプロとして、「これからどのように働けばいいのか」「どうやってパフォーマンスをあげるのか」を語ります。
脳科学的に、「やらされ仕事は4ヵ月しか続かないけれど、やりたいことは4年続く」と言われます。あなたが、夢中で何かに没頭できた体験。やらされ仕事ではなく、自らやってみようと思えたこと。何が原因かわからないけど、いつの間にか、『深い集中』が失われたすべての人へ、ノウハウをお伝えします。

「反復運動」で触覚を最適化する

 集中力の要素を分解すると、「立ち上げ」「深さ」「持続力」という3つがあります。

 仕事や作業を長時間続けていると、集中力は低下します。ここでは「持続力」に対する解決法を紹介します。

 集中が持続しない原因のひとつに、「ワーキングメモリの低下」があります。

「ワーキングメモリ」とは、作業に必要な情報を一時的に記憶し処理する脳内システムです。この部分を動かし続けると、徐々に疲労がたまり、システムの稼働が悪くなり、結果的に作業効率が落ちてしまいます。

 1日中1つの作業を続けることが不可能なことからもわかるように、時間とともに集中力が低下するのは、脳の仕組み的に避けられないことです

 しかし、そのワーキングメモリを「回復」させることができれば、集中の持続力を高めることができます。

 ワーキングメモリの回復に効果的なのは、脳の血流をよくする「反復運動」です。

 特に、「噛む」行為が効果的であるという実験結果があります。

 就業中の大学職員129人を対象に実施した実験によると、作業中にガムを噛むことでストレスや疲労の低減効果が見られ、不注意や勘違いが抑制されたそうです。

 他にも、反復運動はあります。

 イライラすると「貧乏ゆすり」をする人がたまにいますが、あれも反復運動をすることで、副交感神経を優位にして落ち着こうとしている行為という見方ができます。

 家の中でのリモートワークであれば、誰かに迷惑をかけるわけではないので、貧乏ゆすりも効果的かもしれません

集中に向いた「デスクまわり」とは

 集中のためには、「片づいたデスク」であることが大事です。

 今、目の前にある集中すべき対象以外に、他の情報が見えると集中がそがれます。

 これは、ToDoリストやカレンダーも同様です

「いつも見えるようにしておく」ということは、「いつも常に考えておかないといけない」ということです

 ToDoリストは確認するときだけ見るようにします。カレンダーも、見えないところに貼り替えるようにしましょう。

 また、デスクのサイズは「横幅95センチ」くらいがベストです。

 あまり横幅がありすぎると、つい書類などを置きっ放しにしてしまいます。それが目に入ると、それだけで集中はそがれてしまいます。

 ぜひ、見直してみましょう。

井上一鷹(いのうえ・かずたか)
株式会社ジンズ執行役員 事業戦略本部エグゼクティブディレクター 兼 株式会社Think Lab取締役
NewsPicksプロピッカー(キャリア)。
大学卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事後、ジンズに入社。商品企画部、JINS MEME事業部、Think Labプロジェクト兼任。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。
著書『深い集中を取り戻せ』(ダイヤモンド社)が好評発売中。