フィッシュアンドチップスは、労働者の救世主
19世紀半ばになると、トロール漁法が発明されました。これによって魚が都市部にも流通するようになり、フィッシュフライとフライドポテトをセットで提供する料理(フィッシュアンドチップス)が出回るようになりました。
今でいうファストフードですね。「ただ焼くだけ」、あるいは「ただ茹でるだけ」といった料理しか食べられなかった低所得者層にとって、フィッシュアンドチップスはありがたい食べ物でした。
その一方、ジェントルマンはあいかわらず「ジェントルマンはかくあるべし!」といった精神をさらに深化させていきます。
文化は上から下へと伝達していきます。しかし、イギリスでは支配階層であったジェントルマンが質素な食事を好んだことから、イギリス料理は発展しませんでした。
また若者が家を離れ、他の家庭に住み込み、家事に従事するサーヴァント制度というものがありました。いわば、社会に出る前の修業のようなものです。
食事を作るのも仕事でしたが、料理経験のない若者が作る料理がおいしいでしょうか。いわゆる「おふくろの味」が継承されることはなかったのです。
こうしてイギリス料理は今に至るのです。
代々木ゼミナール・地理講師
鹿児島県出身。「東大地理、センター地理」などの講座を担当する実力派。一部の講師しか担当できないオリジナル講座を任され、これらは全国の代々木ゼミナール各校舎・サテライン予備校にてサテライン放映(衛星通信を利用して配信)されている。「地理」を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義は、9割以上の生徒から「地理を学んでよかった!」と大好評。講義の指針は「地理とは、地球上の理(ことわり)である」。