困難に立ち向かい、見えた成長プロセス

こうした環境や仕事のプレッシャーに耐えられず、辞めていくインターン仲間もいた。

正直、私にも「逃げたい」という感情は少なからずあった。しかし、ここで諦めて自分の成長が得られなかったら「インターンをはじめた意味がない」と思った。今までの自分を変えたかったはずなのに、ここで辞めたら何も変わらないじゃないか。突きつけられた「何もできない自分」と全力で向き合い努力しようと決意した。これが、自分の変化の大きな一歩だった

それからは、先輩の電話の録音を聞いて会話の流れや質問のしかたを勉強したり、自分の録音を上司に聞いてもらいフィードバックを受けたり、本を読んで営業術について学んだり……。自分の仕事に全力投球するようになった。そうしているうちに、偶然ではないアポイントを獲得できる手ごたえが掴めるようになってきた。電話をしながら頭をフル回転させ「次は何を聞けばアポイントにつながるかな」と考えられるようになった。すると、自然と目標も達成できるようになっていった。あんなにプレッシャーに感じていた仕事が、むしろ楽しいと感じられた。と同時に、人と比べて劣っていると思っていた自分にだんだん自信が持てるようになった。

在宅勤務での業務も、自分に合った働き方ができる工夫をした。私にとっては人とのコミュニケーションが精神的な安定のために特に重要だ。そこで積極的にメンバーとのオンラインランチを設定したり、仕事に関してフランクに話すコミュニケーションの時間を設けたりした。そして、その日行うべきタスクごとに使う時間を明確に定めて自分を律し、仕事とプライベートとをうまく切り替えられるようになっていった。

長期インターンを通じての成長と飛躍

想像以上にインターンを通して得られたことは多かった

「私はこんなことをしてきました」と胸を張って言える経験ができた。自分に自信が持てるようになった。スキルの成長だけでなく、仕事への向き合い方などのマインドも変化した。また、企業選びの軸を見つめなおすという観点では、実際に働いたからこそわかる「生の情報」から自分の適性などを理解し、それを自分ごとで語れるようになった。

例えば、営業という仕事は個人プレーになってしまうことも多い職種だ。だが、私のチームには自分の経験をメンバーに自ら共有する人が多く、チーム全体で成長していく実感があった。もともとチームで何かをすることが好きな私は、こういうオープンマインドな環境の方が働きやすいと気づかされた。それは就職活動の軸の一つになった。これを実際の経験から語り、説得力のある話ができるようになったと感じている。

そして最後に、優秀な仲間と出会えたことも大きかった。私以外にも数名のインターン生がおり、みな大学生だったのですぐに仲良くなった。インターンをはじめる大学生は成長したいという意識が強い人が多い。そういう人が集まるコミュニティに属したことで自分の視座も高くなったように感じる。業務だけでなく就職活動の情報についても共有していたので、インターン仲間は就活仲間という存在にもなった。お互いにキャリアの話をして気づくことや学ぶことも多かった。なにより、決して甘くはない環境でつらい時間をわかち合い、お互いに高めあった経験は社会に出てからも大切な思い出になるだろう

自分のことを普通の大学生だと思っているあなたへ

私はこれらの経験や学びを活かし、無事に第一志望の企業に内定をいただくことができた。

私の就職活動という「恋愛」が成就したのである。まさか、大学生活はバイトか遊ぶことしかしておらず、他人と比べて劣っていると思っていた私が、第一志望の内定を勝ち取れるとは。長期インターンをはじめるまでは想像できなかったことだ。あのとき、思い切って長期インターンに挑戦して良かったと今でも心から思える

長期インターンは生半可にできるものではない。必ず困難にぶちあたり、自分の弱いところと向き合わなければいけない。会社に属して働いている以上、自分の仕事に責任が問われる。学生だからという言葉は通用しない。だからこそ、それを乗り越えればやってきたことがちゃんと成長として返ってくるし、見える世界も変わる。これが、実際に1年3ヵ月間インターンをして感じたことだ。

だからといって、全員が長期インターンを経験するべきだと私は思わない。就職活動と長期インターンを両立させるのは大変で、リスクもある。ただ、自分が長期インターンをする理由が見つかっているのに、不安でなかなか踏み出せない人には思い切って挑戦して欲しい

(本稿は、『絶対内定2023-2025 インターンシップ』絶対内定2023 自己分析とキャリアデザインの描き方』を抜粋、再構成したものです)

藤本健司(ふじもと・けんじ)
我究館館長
千葉大学教育学部卒業後、(株)毎日コムネット入社。営業に配属され、2年目に優秀社員賞、3年目に社長賞を受賞。2012年「世界の教育問題に対峙したい」との思いから、青年海外協力隊としてケニア共和国で活動。3年間、JICAや現地の省庁と連携し、児童福祉施設における情操教育やカウンセリングに携わり、「人は志や気づきによって大きな成長を遂げられる」ことを実感する。2016年より(株)ジャパンビジネスラボに参画。我究館学生校の主担当コーチとして大学生をサポート。外資系投資銀行、コンサルティングファーム、総合商社、広告代理店など、難関企業に多数の内定実績がある。