対話に必要な
4つのステップ
1. 問題を眺める
2. 自分もその問題の一部だと気づく
3. 問題のメカニズムを理解する
4. 具体的な策を考える
この4つのステップで、前述した「負け癖のついた部下たち」について考えてみましょう。
当初、このマネジャーは「状況がわかっていない、やる気がない部下たち」と解釈していました。それに対して「どうやったら部下たちに状況を理解させられるか。やる気を高めるにはどうしたらいいか」という問題に直面していました。
マネジャーは日々頭を悩ませていましたが、当時は自分が見えている問題を単純化して状況を解釈していました。
しかし、対話のプロセスは、「状況がわかっていない、やる気がない部下たち」の問題について、もっと多面的な角度から「1.問題を眺める」ことから始まります。じっと問題を見続けていると視野も狭くなり、一人で悩んでしまいがちです。
眺めるには、一度距離を取らなければなりません。眺める作業は他のメンバーと一緒に行う余地が生まれます。
そのためには、今見えている問題に対処したり、解決策を考えたりするのを一度脇に置き、問題を対象化して眺めていくことが大切になります。問題について眺めていくと、問題に付随した次のようないろいろな出来事やエピソードが浮かび上がってきます。
・競合に負けている理由を問い詰めたとき、部下の表情が困惑しているように見えた
・問い詰めた後も、職場の雰囲気に変化が見られなかった
・競合に乗り換えた顧客を訪ねたとき、顧客が「競合A社は、我々の見すごしていた課題をよく汲み取った提案をしてくれた」と教えてくれた
・逆に、小さいけれど自分たちが競合相手から取り戻せた事例があった
・それに対しマネジャーは、「なぜもっと考えて提案しないんだ」と発言した
・数値管理を厳しくした後は、さらに部下の自発性が下がり、雰囲気が悪化した
このように問題を眺めていくと、いろいろな出来事やエピソードが出てきます。
しかし、これはマネジャーの内省の範囲にすぎません。対話することで各人が見えている風景が組み合わさり、「あれ? これってもしかしてこういうこと?」と新しい風景が開けてくることがあります。
したがって、マネジャー個人だけではなく、部下と一緒に問題を眺めることは、出来事やエピソードを掘り起こすうえで極めて有用です。