部下を交えて断片を持ち寄ると、こんなことが見えてきました。

・今いる部下の多くは、競合にシェアを奪われ始めた後に着任したメンバーである
・どうやってこの市場で勝ってきたのかを経験していない
・こうしたら勝てるというセオリーがわからないし、そもそも考えたことがない
・今の状況が悪いということは十分わかっている
・何から手をつけたら成果につながるかわからず、困っている
・打開策を考えるのは自分(部下)の仕事ではないと思っている

 こうしてエピソードの断片が掘り起こされてくると、「2.自分もその問題の一部だと気づく」ポイントが出てきます。

「自分も問題の一部だ」とは、決して自分が悪いと気づくのではなく、自分もその問題の発生メカニズムに関わり、自分なりに手立てを講じられるポイントが見つかるという意味です。

・「状況を理解しておらず、自発的に考えようとしない」のではなく、そのような理解に基づいて管理を厳しくした結果、余計に問題が悪化した
・自分からどんな行動を起こすべきかわからないところで、一方的な改善が求められた
・悪い状態であるという認識がさらに深まり、無力感が増していた

 このような悪循環が起きているとわかれば、問題と自分との関わりが見えてきます。つまり、「3.問題のメカニズムを理解する」ことができ始めたのです。

 こうなれば、何から手をつけたらいいかが徐々に見えてきます。

 すると「4.具体的な策を考える」段階にきます。自分がよかれと思ってやったことや、無意識のうちに行ったフィードバックなど、様々なことが状況を悪くしていたことに気づけば、意識的に少しずつ変えられます。

 他にも個別事例を検討しながら、どんなアプローチがいいか、一緒に考える勉強会を開催したりするのもいいでしょう。ひとまず、試してみる価値はありそうです。

【追伸】「だから、この本。」についても、この本について率直に向き合いました。ぜひご覧いただけたらと思います。

【「だから、この本。」大好評連載】

<第1回> あなたの会社を蝕む6つの「慢性疾患」と「依存症」の知られざる関係
<第2回>【チームの雰囲気をもっと悪くするには?】という“反転の問い”がチームの雰囲気をよくする理由
<第3回> イキイキ・やりがいの対話から変革とイノベーションの対話へ!シビアな時代に生き残る「対話」の力とは?
<第4回> 小さな事件を重大事故にしないできるリーダーの新しい習慣【2 on 2】の対話法

<第5回> 三流リーダーは組織【を】変える、一流リーダーは組織【が】変わる

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宇田川元一(うだがわ・もとかず)
経営学者/埼玉大学 経済経営系大学院 准教授
1977年、東京都生まれ。2000年、立教大学経済学部卒業。2002年、同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。2006年、明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。
2006年、早稲田大学アジア太平洋研究センター助手。2007年、長崎大学経済学部講師・准教授。2010年、西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。
専門は、経営戦略論、組織論。ナラティヴ・アプローチに基づいた企業変革、イノベーション推進、戦略開発の研究を行っている。また、大手製造業やスタートアップ企業のイノベーション推進や企業変革のアドバイザーとして、その実践を支援している。著書に『他者と働く――「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)がある。
日本の人事部「HRアワード2020」書籍部門最優秀賞受賞(『他者と働く』)。2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。