構造計算の限界についてのナレッジ「塔状比」とは?

 建築の限界はどうだろう?

 少し構造計算の限界についてのナレッジをシェアしておきたい。間口の幅に対して、スレンダーな建物を計画する際に重要となるのが「塔状比」という指標だ。

 簡単な図式なので、ぜひ覚えておいて欲しい。この塔状建物を扱う理由は、都心において意外と一般的な投資家が避けがちな開発手法にもかかわらずリターンが出やすいからだ。

 建物の横幅1に対して、塔のようにそびえ立つ高さが3倍であれば塔状比は3となり、建物幅の6倍の高さがあれば塔状比は6だ。そして超高層でもない限り、建物を無理なく設計し建設できる限界の塔状比は6までだ。

 ここで重要なのは塔状比6までが限界と分かれば、上層にさらに階を増やして建設できるかもしれないという可能性を掴んでもらうことだ。

 ただし、それを実現するためには、狭い敷地で、また重量が非常に重たい鉄筋コンクリート造であれば杭工事が非常に難しいので、相当なコストアップが発生することも一方で認識しておく必要がある。

 現実では設計事務所や施工会社が合理的な計画を立ててくれるので、あなた自身は直感的にこのことを知っていて指示さえ出せればよい。

 面白いのは銀座や日本橋などの土地の価格が異常に高い場所の建物だ。こういう場所は、杭や構造体のコストアップに比べて土地の価格が非常に高い。そして家賃ももちろん日本一だ。

 この場合は建設コストをじゃぶじゃぶかけてでも、限界までスーパーペンシル型のビルにして延床面積を最大化するべきだ。

 僕の大半の物件は設計と施工の限界に挑戦しながら、この塔状比6の限界を目指し、一般の投資家やデベロッパーが手出しできない建物を開発している。

 こうして平均的なプレイヤーが諦めてしまっている狭い土地に、平均を超えて床面積の限界を突破することでアルファを創造する。

 当然NOI(実質収益)も押し上げられ、不動産評価額も飛躍的に伸びる。この不動産評価額の伸びが建設のコストアップ分を上回ってくれるのならスーパーペンシルビルに挑戦する価値がある。

上田真路(うえた・まさみち)
建築家・不動産投資家
KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。
鹿島建設入社4年目に不動産投資を開始。数々の不動産投資セミナーに足を運び、不動産関連書籍を数十冊読破。そんな中で出会ったメガ大家集団をメンターに持ち、指導を仰ぎながら不動産投資をスタートする。最初に行った東京・神楽坂での新築マンション開発では超狭小地に苦労し、辛酸を舐めつつも独自の不動産投資スタイルを確立する。現在5棟の超優良物件を保有。保有物件の中では投資額が4年間のうちに26倍になったものもある。
1982年高知県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。
大学院卒業時にリゾートホテル開発プロジェクトにより早稲田大学小野梓芸術賞を受賞。
同社では国内外で建築設計や大規模な都市開発業務に従事。鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。2018年、GSD不動産デザイン学科を卒業、外資系不動産ファンドでの投資業務を経験した後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在はハーバード学生寮生活で得た原体験をもとに、住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営する。また、慶應義塾大学SFC特任講師、早稲田大学特任講師として「不動産デザイン」について教えている。初の著書に『ハーバード式不動産投資術 資産26倍を可能にする世界最高峰のノウハウ』(ダイヤモンド社)がある。