『週刊ダイヤモンド』6月19日号の第1特集は「商社 非常事態宣言」です。脱炭素、人権、米中対立、若手流出、看板部門の凋落、コロナ禍、そして次の稼ぎ頭不在――。ビジネスモデルを崩壊させかねない7大リスクを検証し、就職人気ナンバーワンの商社の裏側で起きている地殻変動を明らかにします。(ダイヤモンド編集部 重石岳史、田上貴大)
2021年3月期に業界序列が激変
4位転落の三菱商事は復権なるか

「結果責任について重く受け止めている」。6月2日、ダイヤモンド編集部の取材に初めて応じた三菱商事社長の垣内威彦は、沈痛な面持ちでそう“敗戦の弁”を語った。
2021年3月期、商社業界の順位に地殻変動が発生した。
業界首位の座を維持していた三菱商事の連結純利益が、前年比67.8%減益の1726億円まで減少。ライバルの伊藤忠商事は純利益の落ち込みを同19.9%減益の4014億円にとどめ、5年ぶりとなる首位交代劇が起きた。
新王者となった伊藤忠は、純利益と株価、そして時価総額で悲願の「3冠」を達成した。片や三菱商事は、鉄鉱石高騰の恩恵を受けた三井物産や丸紅にも抜かれ、一気に業界4位まで順位を落としている。
新型コロナウイルスの感染拡大により、未曽有の経済危機に陥った21年3月期。資源や電力、機械やリテールなどありとあらゆる産業に携わる総合商社は、コロナ禍の影響が節々に出た。すでに20年3月期に赤字に陥っていた丸紅を除き、五大商社のうち4社が減益となっている。
その中で三菱商事は、原料炭の市況が悪化したことに加えて、子会社ローソンなどで合計1542億円の減損計上が痛手となった。
それでも垣内は「言い訳するつもりは毛頭ないが、構造的なものが崩れているわけではない」と前を向く。今期の予想利益は3800億円と、不振にあえいだ前期からの倍増を打ち立てた。
新王者となった伊藤忠にも、油断はない。社長である石井敬太は、「後ろを向いている暇はなく、振り返ったら抜かれてしまう」と勝ってかぶとの緒を締める。
コロナ禍の先行きは見通しにくいものの、どの商社も業績回復シナリオを描き始めた。