3. 他にもっと良い人がいる
会社での花形部署の場合、多くの候補者の中からかなり自由に人を獲得できることがある。そのような部署の上司は、今自分が抱えている部下が満足できる仕事をしている場合でも、外部にさらに魅力的な候補者がいれば、今の部下からその候補者に変更してみたいという気持ちに駆られる。
人数を増やせるなら純増でよいのだが、定員のある部署なら、人を入れ替えなければならない。このような場合、部下の仕事能力には問題がないから、受け入れ部署を見つけることは難しくないのだが、どのように異動を伝えるかについて熟慮を重ねなければならない。
花形部署に来る際には、同期からも羨望の眼差しを向けられたことであろうし、当人としても十分に力を発揮できていて、それなりの自信も付いていることだろう。上手に対応しないと、部下のプライドが傷つき、やる気がそがれてしまう。そこで、異動の大義名分が必要となる。
たとえば、会社の中期経営計画にある重点戦略の中に「これからは企業向けよりも個人向けに力を入れる」といったくだりを見つけ、個人向けの戦略を推進する上で必要なスキルや経験を持っている人を探したら、君がもっとも合っていたので、全社的観点からそちらの部署でぜひ腕を振るってほしいということになった……というようなそれらしい理由で送り出そうとする。
4. 戦術に合わない
サッカーなどで監督が変わると、試合に出る選手が変わるように、特定の戦略を進めていく上でその戦略に合った人を集めようとすることがある。たとえば、営業部が、新規獲得を中心の目的とする組織から、既存顧客と長期にわたってより良い関係を築くことを目的とする組織に変わったりする場合などである。
そのとき、上司が部下の中から、戦術に合いそうにない人を見つけ、その人を見放すことがある。丁寧な上司であれば、これからの戦術をきっちりと説明し、その上で部下に対しても行動や価値観の変容を要求し、合意できれば今の部署のまま頑張ってもらう一方で、もし仕事の仕方を変えたくないということであれば、これまでのやり方が合う部署へ異動させようと試みる。
しかしそこまで丁寧に対応する上司は少ない。自分のやり方を一方的に表明して、部下に従うように命じ、過去のやり方に固執する部下との間でコンフリクトを起こす。当然従わない部下に対して怒りが生まれ、部下の査定を低くする。