ただ、ひとたび部下の査定を低くしてしまうと、その履歴のせいで、その部下は他部署から問題児と疑われて異動させられなくなる。にっちもさっちもいかなくなり、上司部下間で冷たい緊張関係が延々と続行する。こういう場合は、さらに上の上司や人事部などが察知して、上司部下いずれか、あるいは両者を異動させるなどの方法で最後の決着を見ることになる。
上司に見放されたら
どうすべき?
ここまで上司の立場で部下を見放すとはどういう状況なのかを述べてきた。では、部下の立場でこの「見放される」状況をどう考えればよいのであろうか。
「問題行動が治らない」場合、部下にとってみれば、唯一自分がまともで、上司を含めた周囲こそが問題だと思っていることがある。「自分だけがまとも」だというケースもあるにはある。例えば、コンプライアンスに抵触するようなことを組織ぐるみで実行しているような部署でそれらの問題行動をかたくなに拒む社員は、上司から見ると問題行動をする社員だが、社会的に見ると上司を含めた組織こそが問題行動をしていることになる。
いずれにせよ、上司からも周囲からも問題社員としてのレッテルを貼られて良いことなど何もない。別の部署に異動できればよいが、社内では過去の問題児としての評判がそのまま受け継がれるだろうから、社外に機会を求める方が良いかもしれない。
「戦力にならない」という状況は、ままある。誰にも向き不向きはあるのだが、特に不器用な人だと、合わない仕事では全く成果が出ない。人に接する仕事は向く人は向くし、向かない人は向かない。長期にこつこつ積み重ねるようなやり方が全くだめな代わりに、短期では爆発的に頑張れる人もいる。
もし自分がやっている仕事が絶望的に向いていないと思ったら、自信を喪失する前に異動を願い出ることだ。ただ、難しいのは、ごくまれに最初は全然だめで向いていないと確信していたのに、あるとき突然できるようになり、むしろその仕事が好きになったりする場合があることだ。
しかし、こうしたことは予測できないし、そのメカニズムを解き明かすことも不可能なので、基本的には早めに逃げてしまうのがよいだろう。無理なものはほとんどの場合、無理なのである。