スエズ運河がもっと早くできていれば、
アパルトヘイトはなかった!?

宮路:アフリカの西側ではそれらの国に寄港して、東側ではケニア、タンザニアを植民地にして最終的にはインドまで行けるようにしたわけです。

 歴史的にみると、イギリスは「交通の要衝」を必ず抑えていますよね。

──なるほど! ここでも地理と歴史がつながってくるんですね。『経済は地理から学べ!』の中にも、「地の利を活かしたインドのシリコンバレー」のように、地理と歴史がつながる話がたくさん出てきますよね。

宮路:ヨーロッパ諸国がアフリカを植民地にしたという歴史を見るとき、こうした地理的視点は不可欠です。

 アフリカの南側を通るとき、寄港地としてもっとも便利なのは南アフリカですが、そこはすでにオランダが入植していました。

 オランダ人がいるところに、後からイギリス人たちがやってきたので、南アフリカの奪い合いが起き、それが南アフリカ戦争となるわけです。

 そしてずっと後で、南アフリカは主権国家となっていくのですが、もしスエズ運河が始めからあって、南アフリカが交易の重要拠点でなければ、白人たちの入植も、アパルトヘイトもなかったかもしれないですね。

 もちろんこれは「歴史のイフ」に過ぎません。しかし、地理的視点で歴史を眺めてみると、どんな経緯で現在に繋がっているのかを深く理解できます。

 だからこそ、もっと多くの人に地理を学んで欲しいと思っています。

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スエズ運河がもっと早くできていれば、アパルトヘイトはなかった!?宮路秀作(みやじ・しゅうさく)
代々木ゼミナール地理講師、日本地理学会企画専門委員会委員
鹿児島市出身。「共通テスト地理」から「東大地理」まで、代々木ゼミナールのすべての地理講座を担当する実力派。
地理を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義は、9割以上の生徒から「地理を学んでよかった!」と大好評。講義の指針は、「地理とは、地球上の理(ことわり)である」。
生徒アンケートは、代ゼミ講師1年目の2008年度から全国1位を獲得し続けており、また高校教員向け講座「教員研修セミナー」の講師や模試作成を担当するなど、いまや「代ゼミの地理の顔」。2017年に刊行した『経済は地理から学べ! 』はベストセラーとなり、これが「地理学の啓発・普及に貢献した」と評価され、2017年度の日本地理学会賞(社会貢献部門)を受賞。大学教員を中心に創設された「地理学のアウトリーチ研究グループ」にも加わり、2021年より日本地理学会企画専門委員会委員となる。
またコラムニストとして、「Yahoo! ニュース」での連載やラジオ出演、トークイベントの開催、YouTubeチャンネルの運営、メルマガの発行など幅広く活動している。著書に『経済は地理から学べ! 』(ダイヤモンド社)、『目からウロコのなるほど地理講義(系統地理編)・(地誌編)』(学研プラス)などがある。
スエズ運河がもっと早くできていれば、アパルトヘイトはなかった!?