効率よく仕事を進めたい、アイデアがパッとひらめくようになりたい、うまい受け答えができるようになりたい…。身近にある「こうなりたい」の近道は、ずばり「考え方のコツ」を手に入れることだ。
『グロービス流「あの人、頭がいい!」と思われる「考え方」のコツ33』では、MBAのクラス、学者、コンサルタントなど、「考えることにこだわっている」人たちが日常で使っている、確実に生産性が上がる考え方のコツだけを紹介している。今回は本書から「枠組みで考えるコツ」を特別に公開する。
有名な枠組みは先人の知恵
枠組みはフレームワークなどともいわれます。ビジネススクールであれば、通常、2年間の在学期間中に数百のフレームワークを勉強します。これらは先人の知恵が詰まったもので、考えることのスピード化に非常に役に立ちます。たとえば、「バリューチェーン」というフレームワークを知っていると、自社のさまざまな活動の特徴や、競合に対する強み弱みの所在などを分析することが可能となります。競争戦略を考えたり、自社のビジネスモデル刷新に着手するための分析を行ううえで非常に役立つフレームワークです。
フレームワークの良い点は、上述のように、先人の知恵が詰まっているため、一から自分で考えなくてもいいという点です。他人の知恵を活用することは生産性を上げる基本でもあるので、多くの有名なフレームワークを知っておくことは、ビジネスパーソンとしての生産性向上に大きく寄与するのです。ただし、有名なフレームワークは「知っていて当たり前」という側面もあるので、ここからは、自分ならではのオリジナルな枠組みを考え、活用することにフォーカスして議論します。
「考え漏れ」を防げる
枠組みで考えることの大きなメリットとして「考え漏れ」を防げることがあります。有名なビジネスフレームワークも、おおむねこの条件を満たしています。当然、この原則はオリジナルのフレームワークにも当てはまります。
たとえば、皆さんが親戚の就活中の学生に「この会社にぜひとも就職したい。給与レベルも平均より高いし、大きな変化はない業界だから」と相談されたらどのように答えるでしょうか。この学生は、枠組みでいえば、「給与レベル(広義には待遇)、安定性」という大きく2つの項目で考えていることが分かります。もちろんこれらは重要ですが、これだけで(特に日本において)一生を左右しかねない、最初の就職先を選んでいいものでしょうか。別の考慮すべき項目がないか考えてみましょう。
そうすると、「やりがいを感じられるか」といった基準や、「自分の強みが生かせるか(かつ伸ばせるか)」といった基準が抜けているのが分かります。もしそれに本人が気づいていないなら、「でも、その企業って本当に就職したら仕事は楽しいのかな? あと君の強みが生かせるような職場なの? ひょっとしたら目先の安定性にとらわれてリスクを過大に恐れていないか?」といったアドバイスもできるでしょう。ここでは、「給与レベル」「安定性」に、「やりがい」や「自分の強みが生きる」といった別の項目を加え、4つの枠組みで考えていることになります。
もし相手が「それも考えているよ。面白い仕事だし、自分の学んだ〇〇のスキルも生かせる」となればそれでOKですし、逆に「それは考えていなかったなあ。どうしよう」となれば、より良い枠組みで考えることにより、より良い結論に到達できる可能性が増すことにつながります。
また、これができれば、「私はこう考えます、なぜなら第一に…、第二に…、第三に…」といった主張にも隙がなくなり、非常に説得力を持つようになります。なお、こうしたオリジナルのフレームワークに絶対的なものがあるわけではありません。
今回のケースであれば、人によっては「友人に対する見栄」などを重視するかもしれませんし、数年後に起業を志す学生であれば、待遇などはさておき、ひたすら自分の能力が伸びることを重視するかもしれないからです。ポイントはその時々のシチュエーションに合わせ、「考慮すべきことをモレなく検討できる」ということなのです。