富裕層の定番節税法「海外法人設立」で人気の国は?理由とリスクを税理士が解説Photo:Marina113/gettyimages

タックスヘイブン(租税回避地)に法人を設立し、その法人経由で海外の金融商品を運用するスキームは根強い人気がある。こうした手法に世界の課税当局が目を光らせているが、法人を設立しやすい地域がある。特集『海外の節税 富裕層の相続』(全21回)の#3では、その手法とリスクについて、国際税務に詳しい元国税調査官の視点で詳述する。(元国税調査官・税理士 安永淳晴)

海外取引を利用したスキームは
容易に組成できる

 グローバル企業に限らず、富裕層を中心とした個人の間でも、海外の資産運用や租税回避は行われている。そこで活用されるのが、金融商品などの取引を利用したスキームだ。

 よく見掛けるのが、国内居住者が外国で法人を設立し、その法人名義で金融機関の口座等を開設した上で、金融商品の取引を開始する手法だ。ちなみに、この外国法人はいわゆるペーパーカンパニーである。

 その際、外国法人を設立する国については、英領ヴァージン諸島(BVI=British Virgin Islands)が主に選択されている。手続きの容易さおよび税制などの面で、メリットがあるからだ。

 ここからは、タックスヘイブン国を利用した具体的な運用スキーム、そして「四つの落とし穴」について説明していこう。