会社の株が厄介すぎる理由

 たとえば資本金が1000万円で利益剰余金といわれるものが5000万円あれば合計の6000万円が株の金額となるのです。もし社長がその株をすべて持っていたとしたら、先ほどの相続税がかからない金額の4800万円を超えます。税金がかからないようにするためには生前に後継者に贈与しておく方法が1つです。

 しかし相続税がかからないとしても、会社の株が問題となるのです。

 たとえば、6000万円の株があり、他に預貯金が1000万円で合計7000万円の財産の場合は相続は大変です。預貯金は相続人が自由に使うことができますが、中小企業=上場していない会社の株をもらったとしてもうれしくはありません。預貯金を引き継ぐ人と株を引き継ぐ人とで不公平感が生じてしまい、相続税とは別に相続の問題になる可能性があります。

 会社の株を社長だけが持っていればいいのですが、社長の家族や親戚が持っている場合には、それがまた問題となります。おい・めいやおじ・おばであっても問題になることは多く、ときには兄弟・姉妹間でも揉めるものです。

 このような状況では、会社の経営に携わっていない株主が、会社に「株を買ってくれ」と言ってくることもあります。コロナ禍で、お金に不安があるのは株主も同様です。「この株を買ってもらえれば……」と考える可能性もあります。

 親戚が亡くなった場合にはその親戚の配偶者や子が相続することになり、さらに会社と遠い関係の方が株を持ってしまい、後々の憂いとなる可能性があるのです。

 最近では、会社を設立する場合は株を社長1人が持つことも増えてきましたが、昔設立した会社は株を分散していることもあります。最悪なのは、過半数の株を社長以外の人が持ってしまうことです。

 過半数の株があれば社長をクビにすることもできるので、会社が大きな混乱に巻き込まれることになります。社長とその後継者に株を集めておくことが求められるのです。ではそれをいつやればいいのか。

 新型コロナウイルスでもし大きな損失があった場合、会社の株の金額も一般的には下がります。そのタイミングで株を買いとり、社長または後継者に集中する方法もあります。この災いを転じて事業承継対策も考えてみましょう。