このコロナ禍では、成長を目指すだけではなく、ムダを省き、筋肉質な経営を目指さなければいけません。経費精算のためにわざわざ出社していては、時間とお金をドブに捨てているようなもの。経理とは「経営管理」の略称。「営業」が会社の攻めを司る剣なら、「経理」は守りを固める盾です。右肩上がりの時代はどこの会社も営業重視でしたが、コロナ禍では経理がいっそう重要になりました。
本連載は、「リモート経理を導入するためのノウハウ」を紹介するものです。著者は「会計とITの融合」を得意とする税理士、井ノ上陽一氏。『リモート経理完全マニュアル 小さな会社にお金を残す87のノウハウ』を出版し、「いつでも・どこでも・誰でも」安心に経理業務ができるメソッドをあますところなく伝えています。

「自社株はいらない」社長の相続トラブルとは?Photo: Adobe Stock

社長の相続トラブルと解決策

 会社は継続していくのが原則です。人の命には限りがありますが、会社は社長(経営者)を代え、存続させることができます。では今の会社の行く末を考えているでしょうか。

 新型コロナウイルスの混乱の中、社長も1歳ずつ年をとっていくことは変わりません。後継者をどうするかは常に考えておきましょう。

 後継者として考えられるのは、家族と社員です。いずれの場合も、所有と経営を分けて考えましょう。社長が過半数の株を持ちつつ退任し(会長になることも含む)、会社の所有権を保ちつつ、経営する社長のみを変更することもできます。

 家族に引き継いでもらうのが理想かもしれませんが、適性を見極めることも大事です。従業員も含めて、後継者候補を選び、中長期の視点で育てていきましょう。

「社長に万が一のことがあったら、会社がどうなるか」は常に考えておくべきです。自分の会社を大事にしたいからこそ今後のことを考えましょう。

 事業を引き継ぐ事業承継は、社長の後継者を見つけることだけではなく株の問題もあります。ご自身の会社の株がどんな構成で誰が持っているかを今一度確認してみましょう。万が一の場合その株は社長の相続人に引き継がれます。

相続の基本を学ぶ

 相続人とは基本的に配偶者と子です。たとえば、配偶者と子どもが2人いた場合、3000万円+600万円×3人=4800万円の財産までは相続税がかかりません。この財産には社長の預貯金、金融資産、不動産、そして会社の株も含まれるわけです。

 この会社の株がなかなか厄介なのです。

 会社の株以外の財産は明確に金額が決まっていますが、会社の株は金額が決まっていません。計算しなければいけないのです。ざっくりと計算すると決算書のB/S(貸借対照表)の純資産の部の金額(資本金にこれまでの利益の蓄積である利益剰余金を足したもの)になります。