ジャーナリスト英バーミンガム北部のアマゾン物流センターに潜入したジャーナリスト、ジェームズ・ブラッドワース氏 Photo by Masuo Yokota

日本での潜入取材を終えた後、イギリスとフランス、ドイツの3カ国を回り、アマゾンに対峙するヨーロッパについて尋ねて回った。私と同じくアマゾンの物流センターに潜入したジャーナリストや、賃金アップのためストを打ちつづける労働者たちに出会い、日本とは異なる驚きの実態を目の当たりにした。
※本稿は、横田増生著『潜入ルポamazon帝国』(小学館)の一部を再編集したものです。

潜入取材の先進国イギリスへ
アマゾン倉庫の「絶望」とは

 私はアマゾンジャパンの小田原物流センターで潜入取材が終わった後の2018年3月、ヨーロッパに行き、イギリスとフランス、ドイツの3カ国を約1カ月かけて取材した。

 ヨーロッパには、アマゾンのプラスの面だけでなく、マイナスの面も追及している人たちが多いことがわかった。アマゾンの租税回避の問題や不買運動、労働組合運動の必要性など幅広い問題意識を持ってアマゾンという企業をとらえている人たちが数多くいることを知った。

 なかでも私が注目したのは、私と同じくアマゾンの物流センターに潜入したジャーナリストたちだった。

 アマゾンが日本に上陸してから現時点まで、アマゾンの物流センターに潜入して記事や書籍を書いたのは、日本では私だけである。私はよっぽど変わり者なのか、とも思えるのだが、ヨーロッパに目を移すと同じような志のジャーナリストを探し出すのは容易い。

“潜入取材の先進国”であるイギリスでは、夕方のニュース番組などで、違法に麻薬を売っているという町の個人商店に隠しカメラを持った記者が客を装い密売の事実を暴く、といったニュースが流れるほど潜入取材という手法が社会に浸透している。

 私が、イギリスにおけるアマゾンの物流センターへの潜入取材について調べたところ、ネットで確認できるだけでも、13年11月のBBC放送を皮切りに、《オブザーバー紙》や《ガーディアン紙》、《フィナンシャル・タイムズ紙》などが10回以上にわたって、潜入ルポを掲載していた。強引に日本に当てはめるなら、NHKや朝日新聞、日本経済新聞といった大手メディアの記者が、アマゾンの物流センターに潜入し、それをニュースや記事にするという感じである。

 私はイギリスでアマゾンに潜入した2人のジャーナリストに話を聞いた。

 そのうちの1人、フリーランスのジャーナリストで、イギリスの底辺で生きていく実態を描いた書籍『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』(光文社)を書くために、バーミンガムの北部にあるルージリーという町にある物流センターで働いたジェームズ・ブラッドワース(35)と、ロンドン市内のビクトリア駅近くのパブで夕刻に待ち合わせた。