転職サイト「ビズリーチ」などを運営する巨大スタートアップ、ビジョナル。『突き抜けるまで問い続けろ』では創業後の挫折と奮闘、急成長を描いています。ビズリーチを創業者の南壮一郎さんと、本書にも登場するマネーフォワード社長の辻庸介さんは同じ1976年生まれ。旧知の仲であり、ともにITを駆使したサービスを展開する二人。これまでの経営者とは何が違うのでしょうか。(聞き手は蛯谷敏)
――辻さんも南さんも、同じ1976年生まれの起業家です。南さんは、辻さんをよきライバルとしていつも刺激を受けていると言っていました。
辻庸介さん(以下、辻) それは僕も同じです。彼は事業のアクセルの踏み方がすさまじいし、いい人材を採用することに対してもアクションが徹底しています。事業の執行能力は、僕より全然上だと感じています。
南さん個人について言えば、努力家ですよね。それも特級の努力家。なかなか表からは見えないけれど、やると決めたことをあそこまでやり切るまでやり続けられる人、そして、そのために必要な勉強を徹底的にしている人は少ないんじゃないかな。
例えば、僕らマネーフォワードのIR資料も、彼は全部見ているんですよ。それで、食事をしているときなんかに、「なんであのスキームはこうなってるの?」とか、いきなり質問してくるんです。
――徹底しているんですね。
辻 自分が設定しているゴールイメージが高いんでしょうね。たとえば野球でも、草野球で楽しいと思える人もいれば、実業団で頑張りたいとか、プロに行きたいとか、いろいろなレベルがあると思うんです。その意味では、南さんは最初からメジャーを目指している。目線の高さが印象的だし、僕にとっても常に目線を高くしてもらえるので、すごくいい刺激になります。
南さんにとっては、株式上場も通過点だと思うんです。彼が目指しているのは、やっぱり社会を変えたい、よくしていきたいというところだから。志の高さは行動にひも付きますよね。僕自身、そういう人と話すとやっぱり刺激になるし、勉強になる。
――南さんの経営者としての特徴は何か感じるものはありますか。
辻 経営者はそれぞれのスタイルがあるんですが、南さんはやっぱりお祭り好きな強いリーダーだと思います。周囲を楽しませるエンターテイナーであり、人を巻き込む力、共感力が高いんです。
人を巻き込むときって、本質的にその人が課題だと思っていることを言語化する力が必要になるんです。「世の中をこうしたい」「こう変えたい」と言って、まだ実現していない世界観を信じてもらう。言葉選びも含めて、それが長けている気がします。
彼の場合だと、まずはビズリーチで人材市場を変えたいと思っている。僕から見たら、人材業界には超巨大なプレーヤーがいて「そんな領域にベンチャーが入っていって大丈夫?」と思うんだけど、よくやりましたよね。
競合がどうであれ、「こういう世界をつくるんだ」という意志の強さ、やり切る能力がまず大事なんだと思います。その思いに共感して、素晴らしい仲間が集まってくる。
――辻さんはマネーフォワードで金融業界を変えようと頑張っていますが、そもそもなぜ世の中を変えたいと考えるのでしょう。
辻 なんでこんなに大変なことまでして世の中を良くしたいんですかね(笑)。もしかすると、僕らの世代には、海外で生活したり、留学経験がある人が多いからかもしれません。海外から、世界における日本の立ち位置を客観的に見ていたので、国内で「日本はダメだ」といった、よくある悲観主義を聞くと、「いやいや、日本ってほかの国に比べても、すばらしいところがいっぱいありますよ」って思っている。もちろん、改善しないといけない点もたくさんあるのですが。
残念ながら現状の日本は、世界の中で存在感が低下する一方です。そんな状況を変えるためにも、世界に通用するサービスや会社をつくりたいと思う面はありますね。(談)
(2021年8月26日公開記事に続く)