国産メーカーは「激安」の土俵で戦わず
EVの正当な進化を目指すべき

 足元での国産メーカーの戦略を見てみると、トヨタ自動車はEVシフトを強化し、燃料電池車(FCV)を含めて30年に800万台を販売する目標を打ち出している。ホンダは「40年に脱エンジン車」という野望を掲げ、その一環で24年に軽EVを発売する計画だ。

 また、日産自動車・三菱自動車連合は22年初頭に軽EVを市場投入する予定である。スズキとダイハツ工業もトヨタ自動車と組み、早期に軽EVを共同開発すると発表している。

 各社の計画はまだベールに包まれており、軽EVにおける具体的な戦略はあまり明らかになっていない。だが、くれぐれも「フタを開けてみたら、露骨に中国メーカーを意識した激安EVがラインアップに多数含まれている」という事態にならないことを筆者は祈っている。

 まだエンジン車の需要が根強く残る中、各社がEVを普及させてカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量実質ゼロ)を実現するには、車体の軽量化、バッテリーの質や“電費”の向上、事故防止システムの進化など、EV自体の魅力向上が欠かせないのである。

 そして、これらの進化はコストを削り倒すことでは成立しない。トヨタが法人向けに数量限定で販売している軽EV「C+pod」(170万円前後)のように、決して“超激安”ではないが、小さくても歩行者回避機能などの安全性に優れたモデルこそが、国産メーカーが目指すべき姿であるはずだ。

 業界を騒がせる宏光MINIの安さは確かに魅力だが、日本のメーカーは間違ってもウーリンに対抗して価格競争に走らず、未来を見据えて良質なものづくりを続けてほしいものである。