「自分の考えや打ち合わせ内容をその場で図解する。このテクニックがあれば、会議、ブレスト、プレゼンが劇的に変わる。考える力と伝える力が見違えるようにアップする」
こう語るのは、アートディレクター日高由美子氏。「ITエンジニア本大賞2021」のビジネス書部門グランプリを獲得した『なんでも図解ーー絵心ゼロでもできる! 爆速アウトプット術』の著者だ。「フレームワーク」や「キレイな絵」を一切排除し、瞬間的なアウトプット力の向上を徹底的に追求するワークショップ、「地獄のお絵描き道場」を10年以上続けている。複雑なことをシンプルに、難しい内容をわかりやすく。絵心ゼロの人であっても、「その場で」「なんでも」図解する力が身につくと評判になり、募集をかけてもすぐキャンセル待ちに。
本連載では「絵心ゼロの人であっても、伝わる図を瞬時に書くためのテクニック」を伝える。

「自民党の派閥」と「総裁選の候補者」を【1枚の図】にまとめた!

「人数」にフォーカスして、派閥を図解!

 菅総理大臣の後任を巡って総裁選の話題が毎日のように報道されています。

 ニュースの中で「派閥」というワードを聞くたびに、「派閥ってなんだろう?」「自民党の中にいくつあるのだろう?」「勢力の差は?」と素朴な疑問が頭に浮かびます。

 この「派閥」について、Wikipediaの「自由民主党の派閥」を参考にして、「勢力(人数)」にフォーカスした図解をしました。政治にとって「数」は超重要なファクター。今回は数値の視覚化である「グラフ」のポイントを、図解の実践とともにお伝えします(本記事の情報は2021年9月13日時点のものです)。

【参考】※タイトルクリックで記事に飛びます
Wikipedia 自由民主党の派閥

まずは項目と数値を整理しよう!

 図解するにあたって、内容の理解を兼ねて表にしてみます。今回は、表とグラフを並列に配置して、名称・通称・代表と構成人数をわかりやすい1枚の図にします。下図を見てください。

「自民党の派閥」と「総裁選の候補者」を【1枚の図】にまとめた!


 まず作成してみたこの表、コンパクトにするため要素を凝縮して配置していますが、視認性という点では改善の余地がありそうです。もちろん、頭の整理に使うだけであればこのままでも構いません。今回、グラフの横に添えるという点も考慮しながらブラッシュアップします。

●改善点その1
要素ごとのブロックに対して実線が多いため、文字や数字が頭に入りにくい→線の整理

●改善点その2
1つのブロックに2つの項目(通称・会長)が入っているので、スムーズに視線が動かない→1つのブロックに1つの要素

●改善点その3
ニュースでは「名称」よりも「通称」がよく使われている→「通称」を先に

 以上を改善して図を作成しました。下図を見てください。改善前と改善後を比べてみましょう。

「自民党の派閥」と「総裁選の候補者」を【1枚の図】にまとめた!

 いかがでしょうか。内容に変更はありませんが、文字の視認性が上がりシンプルに視線の誘導ができて理解しやすい表になりました。さあ、それでは勢力(人数)が一目でわかるグラフを作成しましょう。

基本のグラフの型はこれ!

 PCを使えば簡単にグラフが作成できますが、例えばExcelを開くと多様なグラフのメニューが出てきて、迷ってしまうことはないでしょうか。

 よく使われるグラフの型とその特性を知ることで、図への落とし込みもスピーディに進められます。
まず、代表的な6種類の型について説明します。

「自民党の派閥」と「総裁選の候補者」を【1枚の図】にまとめた!

①棒グラフ
複数の要素の量を比較するときに。量の差を直感的に伝えられます。

②帯グラフ
構成比率の比較をするときに。比較する全体の長さは揃える。(軸全体が100%を表す)

③円グラフ
全体の中での構成比を示すときに。

④折れ線グラフ
時間的な変化に沿って、連続した量の推移を示すときに

⑤散布グラフ
2つの特性を横軸と縦軸とし、観測値を点で記録し傾向を推測するときに

⑥レーダーチャート
複数の指標(5つ以上の場合が多い)で特性を表し、全体の傾向を示すときに

 もちろん他にもたくさんのグラフのパターンが存在しますが、日常の仕事の図解の中でよく使われるものをピックアップしています。

「人数差」は棒グラフで表す!

 今回グラフにするのは「派閥の種類」に対しての「派閥の人数」です。時系列での変化や比較ではないのと、派閥ごとの人数差を直感的に伝えたいので、「棒グラフ」が適しています。

「自民党の派閥」と「総裁選の候補者」を【1枚の図】にまとめた!

 棒グラフには縦棒グラフと横棒グラフがあります。縦棒グラフは汎用性がありますが、項目の名称が長いときやランキングを表すときは横棒グラフが見やすい場合が多いといえます。縦棒グラフは時系列での説明がしやすいので、折れ線グラフと重ねて使用するときは縦棒グラフを選びましょう。

 また、「積み上げ型棒グラフ」は、一つの棒の中で項目の内訳の数値を示し、全体の長さでその合計値を表現できます。