保険モニタリングレポートを
金融庁が公表したわけ
9月10日、金融庁は「保険モニタリングレポート」を公表した(https://www.fsa.go.jp/news/r3/hoken/20210910/20210910.html)。本編は62ページに及ぶ膨大なもの。8月31日に公表された「2021事務年度金融行政方針」には保険に関する記述が少ないことから、補完的な位置付けといえる。
保険会社を取り巻く環境は変化しつつある。人口減少や自動運転技術をはじめとする技術革新等により国内市場が縮小する可能性に加え、消費者のライフスタイルや嗜好の変化、デジタル化の進展等によって顧客ニーズが変化してきている。何より、低金利環境の継続や自然災害の多発などで、保険会社の収益環境は目まぐるしく変化しつつある。
他にも、昨年度には第一生命保険で元営業職員による約19億円もの巨額な金銭不祥事案が発生したり、銀行を中心とした外貨建て保険の販売に関わる多数の苦情発生、かんぽ生命保険による不適切な募集問題があったりするなど、販売チャネルにおける積年の課題が浮き彫りとなった。
監督官庁である金融庁からすれば、こうした問題が保険業界に山積しており、どういった監督を行うか内外に周知する狙いがあるのだろう。故に、保険モニタリングレポートの公表に至ったとみられる。
そこで、今回の保険モニタリングレポートについて、保険業界を長らく分析してきた保険アナリストで、現在は福岡大学商学部教授を務める植村信保氏に話を聞いた。
――保険モニタリングレポートを読まれた感想はいかがでしょうか。
こうしたレポートを公表したこと自体は、行政の透明性を高めるという意味で高く評価しています。書かれている内容は、持続可能なビジネスモデルの構築やグループガバナンスの高度化、顧客本位の業務運営など、かねて当局が問題提起してきた内容ですので、保険業界に何か深刻な問題が起こったために、今回初めてこのレポートを公表したということではなさそうです。
もっとも、昨年度に起こった営業職員による不祥事は一つの背景になっているかもしれません。ここ数年、保険募集に関しては、保険業法の改正など乗り合い代理店に大きな影響がある規制が大半で、営業職員など一社専属チャネルに対しては実質的に新しい規制が入ったわけではありません。そうした中で営業職員による不祥事が起きましたので、一定の影響があったと見るべきかもしれませんね。
――特に気になった点はどこでしょうか。