マイホームを買った人には、
いろいろな税制優遇措置がある(小林)
元国税専門官、フリーランスライター、Y-MARK合同会社代表
西南学院商学部卒業後、2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応等に従事。2017年7月、フリーライターに転身。マネージャンルの記事執筆をはじめ、インタビュー記事作成やセミナーなどを行っている。著書に『すみません、金利ってなんですか?』『すみません、2DKってなんですか?』(以上、サンマーク出版)、『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社)等。
司会 そもそもマイホームは買うのがいいのか、借りるのがいいのか。これは永遠のテーマだと思いますけど、これについてはお2人はどうお考えですか?
小林 その方のライフスタイルによると思います。引っ越しが多い人は、絶対賃貸がいいです。いま働き方も自由になっているので、東京に縛られる必要もないですから、今後いろんなところで仕事していきたいっていうんだったら、借りる方が動きやすいですよね。家は、買うのも売るのも結構大変ですし、そのときどきでローンの条件を見たり、税制を見たりとか、いろいろめんどうくさいので。だから柔軟に動けるという意味では、賃貸がいいと思います。
日下部 そうですね。
小林 ただ、そんなに引っ越ししないという方であれば、自宅を買えば、それはそれで資産になりますからメリットはあります。あと税金面で言うと、買った人に対する税制優遇措置はいろいろあるんですけど、借りた人に対する税制優遇措は、何もないんですよ。だから節税もうまく使っていきたいんだったら、買うという選択になるのかなと。経済的な点よりは、ライフスタイルによるところが大きいですよね。
日下部 転勤が多い人だと、買うと大変なことになりますよね。買った家を短期で2~3年間だけ「定期借家契約」で貸すとか。そういう人も結構多いです。
小林 そうですね。
日下部 あとは、今だと水害や地震を考えると、資産だったものが負債にもなりかねないリスクがあります。ただ、本当に価値ある物件であれば、やっぱり持っていた方が、年を取ったときに有利です。大体65歳ぐらいで賃貸マンションとか賃貸アパートは借りにくくなってしまいますので。それを考えると、持っていた方がちょっとは安心かなという気はします。
日下部 『すみません、2DKってなんですか?』の本で、実際にその点を試算してみたんですけど、買うのと借りるのとでは、思ったよりそんなに差がないという結果でしたね。どういう物件を買うかにもよるんですけど。
小林 そう、あまり差がなかったですよね。
日下部 本の中では、35歳で買ったとして50年間保有するという設定で試算しています。85歳までなので、もっと長生きするとちょっと違う話にはなるんですけど、思ったよりは差がないのかなと。ただ、どんどん長生きしていくと、確かに買っておくと、戸建てとかだと固定資産税などのちょっとした負担で済みます。マンションでも管理費や修繕積立金などで、あと月数万円ですが、それでも老後資金でなんとかやりくりできるのかなという感じもします。
小林 そうですね。
日下部 そういえば、老後2000万円問題の住居費ですが、金融庁の報告書を見ると月1万3000円で設定されています。
小林 そうなんです。だから、あれは持ち家の人が前提の試算なんですね。
日下部 マンションだと管理費と修繕積立金を合わせると、月2、3万円は行くと思います。持ち家が分譲マンションだとすでに金融庁の設定より高いですね(苦笑)。だから最終的にはライフスタイルによるっていうのが正解ではあるんですけど、あまり転勤がないとか、躯体がしっかりしていて地盤が悪くない、買い物が便利とかであれば、気に入った物件なら買うのは、すごくいい選択な気はしますけどね。