武田薬品の元社員は
社長と副社長だけ

 その件は公開されていない話なので、直接のコメントはできません。

 ただ当社は社員10人で、このうち武田薬品の元社員は私と副社長だけなんですよ。他は元タケダ以外の優秀な人材を会社設立後に採用しました。

 元タケダ社員ばかりというのは、あんまり実戦的じゃないですよね。固定費の面でも。一から闘っていく体制をつくる必要があると考えて、元タケダ社員の雇用をできるだけ避けました。

 われわれの技術を、新しく採用した若い方へ移植していく。それによって強靭な経営体制をつくるのが一つの目標でした。当社の研究者は武田薬品時代に共同研究した他の研究機関の人とかで、皆30歳ぐらい。私と副社長はベテランですけどね(笑)。

周郷司・GenAhead Bioジェナヘッドバイオ社長すごう・つかさ/1965年生まれ、東京都出身。92年武田薬品工業入社。20年以上にわたり創薬基盤技術の研究に携わる。社内研究員対象のベンチャー企業設立支援プログラム(EVP)を利用して2018年に独立し、現職。 写真提供:周郷司

――20年に開発者2人がノーベル化学賞を受賞したゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」に関し、18年の段階でライセンス許諾を担う海外企業と契約しました。これを使った創薬支援事業をどのように展開しているのですか。

 具体的には製薬会社や研究機関からの依頼に応じて病気のモデル(疾患モデル細胞)を作っています。

 20年のノーベル賞でこの技術が話題になり、顧客層が広がりました。話題になる以前は非常に大きな製薬会社からの依頼が中心でした。受賞後は特定の疾患にフォーカスしたような規模の会社も当社に依頼してくれるようになりました。社内で稟議を通すのに「ノーベル賞受賞の技術で実験する」ということで、通りやすくなったようです。