「自転車操業」もわるくない
なぜ自転車操業がいいのか。それは、まず回転率が上がること。
僕が新米社長だった頃、総資本の回転日数が11.9日の時期があった。これはどういうことかといえば、1ヵ月に3回くらい総資本が入れ替わっている状態。この回数が多いと、少ない元手で多くの売り上げを得ている会社、効率のよい会社ということになる。当時はきつかったけど、効率自体はよかったんだ。まあ、そうしないと回らないという事情はあったものの、ね……。
自転車操業には他にもいいことがある。たとえば、回転がいいから在庫を抱えるリスクが減ること。さらに、従業員みんなが危機感を持つこと。やっぱり、どこの会社にもある程度の緊張感はあったほうがいいと思う。だけど、商売が順風満帆で毎日普通に仕事をできる状態だと、残念ながら、それはなかなか生まれない。
今、ウチの会社を見てみると、当時に比べれば総資本回転率もわるいし、緊張感もあまりない。あの自転車操業を生き延びた僕から見たら、たるんどる!そういう意味では、資金に余裕があってみんなが優雅に仕事してるより、綱渡りで何とかやってるほうが健全なんじゃないかな。
会社の経営に限らず、一般に「余裕がある」のはいいことだと思われてる。だけど、本当にそうかな。仕事のことにしても、家のことにしても、「ヤバい!」って焦ってる時のほうが案外、知恵がよく働いたり人間関係がよくなったりして、楽しいような気がするんだけどな。