言語系と非言語系―右脳と左脳の得意分野

 右脳と左脳は役割が異なりますが、左利きにとって重要なのは、高い割合で「右脳が非言語系」「左脳が言語系」を担当していることです。

 ある研究によると、右利きの人のおよそ96%が左脳で言語系の処理をしていたのに対し、左利きはおよそ73%が左脳で、両利きでは、85%が左脳で言語系の処理をしていると結果がでています。*

 左利き、右利きを問わず、7割以上の人が左脳で言語処理を行っているのです。すなわち、右利きは、右手で文字を書くときに、左脳の運動系脳番地を使いながら、左脳の伝達系脳番地で言葉を生み出すので、左脳の中でネットワークを使います。一方、多くの左利きが右利きに比べて、左手を右脳で動かしながら、左脳で言語処理をしています。左脳と右脳の両方のネットワークを同時に使わないと、文章を綴れないことになります。

 つまり、左利きは両方の脳を使うため、「言葉を使って考えをまとめるのに時間がかかる」傾向があるということです。言語処理が得意な左脳を常に右手で刺激している右利きと違い、左利きは非言語情報を扱う右脳を主に働かせています。言葉に置き換えて言いたいことを発するまでに使用する脳のルートが、ほんの少し遠回りなのです。また、自分の言いたいことのイメージと言葉をつなぐ前に話をしてしまうことがあるため、周囲からずれて聞こえたりもします。

 現代人は言葉を使ったコミュニケーションが主であるため、左利きが日常で抱く違和感にもつながっていると言えるでしょう。もしかすると、うまく話せないとコンプレックスを持つ左利きもいるかもしれません。ですが、右脳には右脳の得意分野があります。

 言い換えれば、本書で紹介していく内容は、右脳を発達させた10人に1人の左利きしか持っていないアイデンティティなのです。

(本原稿は『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』から抜粋、編集したものです。本書では、脳科学的にみた左利きのすごい才能を多数ご紹介しています)

参考文献
*:Knecht S, Dräger B, Deppe M, Bobe L, Lohmann H, Flöel A, Ringelstein EB,Henningsen H. Handedness and hemispheric language dominance in healthyhumans. Brain. 2000;123 Pt 12:2512-8. doi: 10.1093/brain/123.12.2512. PMID:11099452.

[著者]加藤俊徳(かとう・としのり)
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com