細菌とウイルスの違いはシンプルです。細菌は自分で勝手に増殖して生きていけるのに対し、ウイルスは人間など他の生物に寄生しないと生きていけません。また、ウィルスより細菌のほうが10倍以上大きかったりと、生物としては別物です。

 かつては「風邪なら抗生物質」という文化があったのかもしれませんが、風邪に対し、機械的に抗生物質を処方する医者は知識の更新を怠っている可能性があります。風邪の原因は80~90%がウイルスです。抗生物質が有効なシチュエーションがそもそもかなり少ないのです。

新型コロナを超えるパンデミックが起こる?

 また抗生物質は「腸内細菌」という腸の中のよい細菌を殺します。下痢の症状を引き起こす場合もありますし、デメリットのほうが大きいでしょう。

 そして最も重要なのが「耐性菌」の問題です。細菌は抗生物質に耐えられるように自身の性質を変化させていきます。

 耐性菌が恐ろしいのは「耐性菌に対して効果のある薬がなくなり、医療現場で何もできない」状況になることです。

 新型コロナの流行初期、「薬がない感染症」のすさまじい恐怖・絶望は記憶に新しいでしょう。新型コロナは「ウイルス」であり、感染初期は専用の「抗ウイルス薬」が用意できなかったことが問題になりました。

 細菌の場合は、いま存在する「抗菌薬」がすべて効かなくなってしまう事態が懸念されています。例えば、抗菌薬の最終兵器と呼ばれる「カルバペネム」という抗菌薬がありますが、このカルバペネムの攻撃すらガードする耐性菌も出現し始めています。現在、米国疾病予防センター(CDC)が警鐘を鳴らしています。

 もし、この「悪魔の耐性菌」のような菌が大流行してしまったら、いつともわからぬ新薬の開発を待つことになるでしょう。そのときは新型コロナ以上の恐怖に世界が包まれるかもしれません。

 医者を見極める2つのポイント、親御さんや身近な人に教えてあげてください。

【出典】
※1 Hemilä H,et al.: Vitamin C for preventing and treating the common cold .Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jan 31;(1):CD000980.

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)