1.「皆でコラボ」より孤独に思考

 世の多くの川下思考に慣れている人に、なかなか理解できないのがこれではないかと思います。前回の図にも登場した具体・抽象のピラミッドに表現されるように、具体の世界は裾野が広く、様々な専門分野の関係者が関与しますが、抽象度の高い世界に行けば行くほど幅は狭くなり、究極の頂点の最高に抽象度が高い状態では「一人」になります。

 言い換えれば、アーキテクトが考えるべき全体像というのは、一人で構想された抽象度の高い世界観でなければならないのです。

 これが抽象が主役の川上と具体が主役の川下との違いです。具体の世界では、多くの専門家を集めて知識や情報量を豊富に有することがアウトプットの品質を上げますが、川上ではそうは必ずしもそうはなりません。

「多くの専門家が集まるほど品質が上がる具体」に対して「少人数で考えるほど明確なコンセプトが出来上がる抽象」という違いから、抽象度の高い思考が求められる川上では少人数、究極的には「一人で考える」ことが重要になるのです。

「10人で考えたコンセプト」というのを聞いたことがあるでしょうか? もしあるとしても、それは1人で発案した世界観を他の9人が具体レベルで肉付けしたものか、あるいは逆に多くの人からのインプットを得ながら、最終的には一人の人が全体像を作ったものであることが大部分ではないかと思います。