人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し(9月29日発売)、がん、糖尿病、高血圧、食事、生活習慣、人間ドック、メンタルというさまざまな観点から、病気にならない知識と習慣をあますところなく伝えています。
健康診断で測定するコレステロール・中性脂肪の基準値は次の3つです。
・LDL(悪玉)コレステロール(基準値:140mg/dl未満)
・HDL(善玉)コレステロール(基準値:40mg/dl以上)
・トリグリセリド(中性脂肪)(基準値:150mg/dl未満)
LDLコレステロール(以下、LDL)は「悪玉コレステロール」という名称でメディアに扱われ、有名になりました。しかし、LDLは「体に必須の存在」なのです。肝臓で作られたコレステロールは、ホルモンの材料になったり、細胞にとって必要な細胞膜を作ったりするのに欠かせません。
そしてLDLはこのコレステロールを全身に運搬する役割を持っています。ただし「多すぎる」場合には体に害を及ぼします。不要なLDLが血管の壁に蓄積していき、最終的に血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすきっかけになってしまうのです。
足の血管に血栓が詰まり、足を切断する事態になりうる「急性動脈閉塞症」のリスクも高まります。
対照的に「善玉コレステロール」と呼ばれるHDLコレステロール(以下、HDL)は、この血管の壁に蓄積した余分なコレステロールを回収する「ゴミ収集車」のような役割を果たします。HDLが少ないと、「ゴミの回収能力」が落ちてしまい、体に不利益を及ぼします。
9000人の日本人を集めて行われた研究でも、HDLが40mg/dl未満の人は心筋梗塞のリスクが約2.5倍上昇したというデータも存在しています(※1)
こうした理由でLDLが「悪玉」、HDLが「善玉」と呼ばれています。
豆知識ですが、もともとはこういったコレステロールの異常は「高脂血症」という名称でした。しかし、「HDLは低いほうが問題なんだから、高脂血症という名前は正確ではない」という理由で2007年に「脂質異常症」に変更されました。
LDLの基準値は140mg/dl未満とされていますが、糖尿病や腎臓病の人は血管が詰まりやすいので、120mg/dl未満が推奨されています。