また、ウーブン・シティの事業を担うのは、21年1月にトヨタ子会社のTRI−AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)を発展解消して組織された持ち株会社ウーブン・プラネット・ホールディングスと、その傘下にある事業会社「ウーブン・コア(自動運転開発)」と「ウーブン・アルファ(ウーブン・シティ事業)」だ。

 ちなみに、豊田章男社長は、このウーブン・プラネットに50億円もの私財を投入している。さらに、豊田社長の長男の豊田大輔氏はウーブン・アルファ代表取締役としてウーブン・シティの展開を仕切っている。いかにこの事業に力を入れているかが分かるというものだ。

住民とのあつれきに懸念
地域との融和に期待

 だが、そんな豊田章男社長の肝いりのウーブン・シティだが、一方で懸念されることがある。それは、工場跡地に巨大な未来都市の実験場ができることで生じる、地元住民とのあつれきだ。

 ウーブン・シティの建設が進む東富士工場跡地のある裾野市は富士山の麓にあり、近くにはゴルフ場も多いのどかな地域だ。実は筆者は、つい最近この裾野市近郊で開催された某社の試乗会に参加しウーブン・シティ建設地周辺をドライブしたのだが、「ここに未来都市ができると周辺とのギャップが大きいな」と実感した次第である。

 裾野市はトヨタが早くから進出し、トヨタ自動車東日本の前身である関東自動車工業やトヨタ紡織といったトヨタ系部品企業の工場があった。加えて、トヨタの技術研究の総本山である東富士研究所も所在するなど、いわば“トヨタ村”の感があるエリアだ。それでも裾野市全体で見れば、田園風景豊かな典型的な日本の地方都市である。