オンリーワンの押し付けには意味がない

 唯一無二性について1点だけ補足すると、ユーザの声を聞かずに競合他社との差別化ばかりを追求すると、第10回11回でも解説したように、終わりのないコスト競争に陥ったり、求められていない利便性をユーザに押しつけたりする結果となってしまいます。

 一方で、企業のサービス開発にはコストがかかりますし、その結果として収益を上げる必要があります。行政であれば限りある国民の血税を1円も無駄にしないための工夫が必要になります。

 バリューチェーン上の自社の強みやボトルネックを理解し、ユーザから求められている価値をしっかりと分析したうえで、ユーザに認められる付加価値をいかに創出できるかが、結果唯一無二性を生み出すことになります。

 今回は唯一無二を追求することによってインド人の生活を大きく変えたアドハーの取り組みについて解説しました。次回はこの学びを活かして、日本でのマイナンバーの普及について考えてみましょう。

細谷 功(ほそや・いさお)
ビジネスコンサルタント・著述家
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ、クニエ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)『具体⇔抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)等。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者・IGPIシンガポール取締役CEO
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て現職。現在はシンガポールを拠点として政府機関、グローバル企業、東南アジア企業に対するコンサルティングやM&Aアドバイザリー業務に従事。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)、ITストラテジスト。