マイナンバーの一番の問題点は、唯一無二性がないこと
第8回で紹介したゴジェックなどの民営サービスの場合は、利用者を特定セグメントに限定することが可能ですが、公共サービスはその性質から全ての人を対象とする必要があります。
また、利用者からするとプラットフォームが乱立するのではなく、スーパーアプリのように一つのプラットフォームで多くのサービスを受けられることが望ましいといえます。
アドハーの価値は、人口14億人を擁する大国であるインドにおいてこの2点を実現したことにあります。
DXの視点からアドハーを見てみると、一般的な共通プラットフォームを構築した上でAPI(Application Programming Interface/アプリケーションプログラミングインターフェース)を開放する手法を適用したことで、それまで縦割りで分断されていた様々なサービスを呼び込み、利用率を増やすことにも成功しました。
現在、国民の大多数がアドハーを利用しており、いまや公共サービスのみならず、民間サービスも含めた多くのサービスがアドハーで利用可能になっています。
前ページの図でも示したように、日本のマイナンバーもアドハーのように多くの手続きにおいて利用が可能です。現在はマイナポイントの発行などにより利用者数は増えてはいるものの、まだまだ普及が遅れているのは、下図に示すように日本のマイナンバーは複数の選択肢のうちの一つだからです。
一方でアドハーは前述のとおり、インド人の多くにとって唯一無二の身分証明書となっています。
唯一無二性はサービスを考えるうえで極めて重要な概念で、唯一無二性がないものはユーザにとっての付加価値が限定的だといえます。
日本では決済手段として〇〇ペイと呼ばれるサービスが乱立していますが、現金、クレジットカード以外にも多数の決済手段が既にある中で、新たな決済手段がユーザに提供できる価値が限られたものになってしまうのは明々白々のことです。