「ネクストステップ」を
自分の頭で考えてもらう

 だから、私はそれ以降、上司に「報告」するときには、必ず「ネクストステップ」を付け加えるようにしましたし、管理職になってからは、メンバーにそれを求め続けました。「ネクストステップ」のない“報告”をされるたびに、ちょっとうるさいくらいに指摘し続けたたのです。

 なぜなら、それでは「自走する人材」に育たないからです。

「自走する人材」に育つために、第一に求められるのは、「自分の頭で考えること」です。ところが、単に事実を“報告”して、あとは上司の指示を待つというスタンスを許してしまうと、「自分の頭で考える」というトレーニングをする絶好の機会を奪ってしまうことになるわけです。

 だから、管理職は簡単に「指示」を出すのではなく、メンバーに対して「自分の頭で考える」ように促す必要があります。

 先ほどの例で言えば、重要なのは、「目標未達」という結果の原因を分析したうえで、翌月に目標達成するために「どうするのか?」=「ネクストステップ(対策)」をメンバーに自分の頭で考えさせるのです。

 もちろん、未熟なメンバーが示す「対策」は不十分なケースが多いでしょう。そのような場合には、「スケジュール」「リソース」「実現可能性」「効果予測」などの観点から、管理職が質問をすることによって、メンバー自身の思考を深めて、「対策」の精度を高めてもらいます。管理職が「指示」=「答え」を与えてしまうのではなく、自らの頭で「対策」=「答え」を見出してもらうように働きかけるのです。

ステップ・バイ・ステップで、
「思考のプロセス」を学んでもらう

 これは、「連絡」や「相談」のときも同様です。

 メンバーから連絡があった場合にも「で、どうする?」、相談があった場合にも「君はどうすべきだと思うの?」「どうしたいの?」と尋ねる。そして、徹底的に自分の頭で「ネクストステップ」を考えてもらい、自分の意見として伝えてもらう。

 それに対してフィードバックを返しながら、自分の力で「答え」を見出すように導くとともに、「思考のプロセス」を学んでもらうわけです。そうして、「自走する人材」へと自らの力で育っていくのをサポートするのが、管理職の大事な仕事なのです。

 とはいえ、すべてのホウレンソウに対して、質問をベースとした丁寧なコミュニケーションを取ろうとすると、無理が生じることもありえます。

 あまりにも時間がかかりすぎるからです。特に、経験値の低い若手メンバーの場合には、質問をしても「わかりません」という返事ばかりが返ってきて、埒が明かないこともあります。にもかかわらず、「自分の頭で考えてもらおう」と質問ばかりしていると、まるでいじめているような状況にさえなりかねません。

 そもそも、ほとんど経験値のない若手は「自分の頭で考える材料」を持ち合わせていないのですから、いくら質問したところで限界があるわけです。ですから、そのようなメンバーには、すぐに指示を出して、とにかく仕事を動かす経験を積んでもらうのがいいでしょう。

 そして、経験値が上がっていくにつれて、「自分の頭で考える」ように働きかけるのが得策です。

 ただ、いきなり「なぜ、そう考えるのか?」とゼロベースの質問を投げかけるのは酷ですから、例えば、「去年のデータを参考に検討してみるといいかも」「その件については、◯◯さんがよく知っているはずだから、ネクストステップについて相談するといいかも」などと「ヒント」を与えるようにするといいでしょう。

 このように、ステップ・バイ・ステップで、「自分の頭で考えられる」ように導いていけば、メンバーからのホウレンソウに対応する時間を、無闇と長くすることを避けることができるはずです。