転職サイト「ビズリ―チ」などを運営する巨大スタ―トアップ、ビジョナル。『突き抜けるまで問い続けろ』では創業後の挫折と奮闘、急成長を描いています。本書では、ビズリ―チ創業者である南壮一郎氏の人間的な魅力について、澤円氏が語っている部分があります。南氏の強さについて、澤氏は「自分が何をしたいのか」を貫くところにあると解説します。やりたいことを突きつめることの重要性について澤氏に聞きました(今回はインタビュ―の後編、聞き手は蛯谷敏)。
■澤円氏インタビュ―前編▶「「おみくじは大吉しか出ない」ビズリ―チ創業者の言葉の真意」
――インタビュ―の前半で澤さんは、多様な組織に属すると、複数の評価の物差しを持てるようになる。結局はそれが、周囲の評価に振り回されないことにつながるから大切である、とおっしゃいました。
澤円さん(以下、澤) 他人の評価よりも、まず自分がどうありたいかを大事するという考え方へのシフトだと言えるかもしれません。ウェルビ―イングという概念にも近いですね。
特にSNSの登場以降、人々の行動はどんどん可視化されています。個人同士のつながりが強まるメリットも多い半面、他人の行動に振り回される人も増えてしまっています。他人の充実した投稿を見続けていると、何となく自分には価値がないように思えてきたりして。
だけど、このSNSで僕が大事だと思っているのは、「アウトプットをする」という行為なんです。自分の考えをアウトプットする機会があると、自分の考えを整理するきっかけになりますから。
――それが自分の生き方を考える手段にもなるわけですね。
澤 そうですね。ビズリ―チ創業者・南壮一郎さんの話に戻すと、やっぱり「自分が何をしたいか」を貫くことが大事なんです。おみくじで大吉を当てたいもそうだし、彼が始めた事業も根っこのところには、彼が何をしたいかという思いがありますよね。彼はビズリ―チを立ち上げて間もなく、ルクサという別の新規事業も手掛けたんですけど、その時に言ってたのは、「だってやりたいんだもん」だったんですよ(笑)。
事業を立ち上げるには、いろいろなロジックを積み上げることももちろん大切だけど、最後に共感を生むのはその人の思いだったりするんです。「おもしろいな、こいつが言うからやってみようか」となると、やっぱりみんな巻き込んでいける。これも自分は何をしたいかに素直に従った結果だと思いますね。
――自分のやりたいことを突き詰めていく延長線上に、「課題発見力」が磨かれていくと。
澤 やらされて何かをやるよりも、自分がおもしろがって始めた方が、断然、立てた「問い」は魅力的になります。つまるところは、興味を持つという行為に尽きるわけで、それがおもしろい事業にもつながるんだと思います。
最近聞いた話で、ある企業の40代~50代の社員が不満を爆発させているそうなんです。「自分たちはこれまで滅私奉公の精神で会社に尽くしてきたのに、突然『これからは自分でキャリアを考えろ』というのは責任放棄にもほどがある」と。会社からハシゴを外されたといって怒り心頭だと言うんです。「今さら、自分のやりたいことなんてない」と。
だけど、僕からしたらいくらでも変われるチャンスはある。世の中、本当にいろいろな人がいて、いろいろなニ―ズがある。新しい趣味に挑戦してもいいし、新しい出会いを増やしてみてもいい。それが、「違う物差しの世界で生きる」ための一歩なので。
――どんどん踏み出していく方が楽しいですよね。
澤 アインシュタインは「何かが動かなければ何も起きない」と言っていますが、これは人間にもそのまま当てはまると思います。自分が行動しなければ、自分の人生には何も起きません。今は技術の変化がめまぐるしいので、「自分も変わっているんだ」と錯覚しやすいんですが、結局、自分の人生に対して自分が働きかけていないと、何も変わりませんよね。
それに、行動するとおもしろいことがたくさん見えてきます。「自分の生きてきた世の中は、こんなに選択肢が少なかったのか」と気づくと思うんです。南さん自身も、これまでの発想の枠を超えるために、常に行動を続けているんじゃないかな。