守るべきものを守るために、
ペンを手にする
タイトルを「大全」としたのは、誇張ではない。
26ページにある「本書で扱うコピーライティング技術100」を見ればわかるように、従来のコピーライティングにとどまらない広範な分野──事業戦略、マーケティング戦略から、効果計測・分析、テキストデザイン、表現技術や発想法まで──を漏れなくカバーしている。
総計100に及ぶコピーライティング技術を横断的につなぎ合わせ、実用しやすい体系にまとめあげるには、果てしない作業が必要となった。
そのモチベーションを持続できた理由を、こっそりと明かせば、著者たちの個人的な事情がある。
実は、共著者2人は、人生の先行きが見えず、大きな壁にぶちあたっていたときに、コピーライティングに救われたからだ。
私、神田は、第一子が生まれたばかりのときに、外資系メーカーで、日本市場の立ち上げを担った。半年間で実績が出せなければクビ、という厳しい環境に追い込まれ、なんとしても売上を上げなければならない。
いったいどうすれば、顧客が見つかるのか?
そのとき、すでにMBA(経営学修士)を取得していたものの、ゼロから顧客を獲得するためには、無力だった。
そんなとき、海外出張中に立ち寄った書店で、たまたまビジネス雑誌を手に取ったところ、一つの記事が目に飛び込んできた。
「人を動かす言葉の原則に従えば、小さな広告でも顧客が集まる」
そんな都合のいいことがあるはずはないと当初は疑ったが、背に腹は代えられず、新聞に少額で広告を出してみた。
はじめは手酷(てひど)く失敗したが、試行錯誤の末、ほどなく爆発的な反響を得るようになった。
結果、私は、このノウハウを元手に独立。
それからは、コピーライティング技術により、次々と新規事業を成功させてきた。結果、会社創設23年経った今では、中小企業の経営指標を格付した古田土式『社長の成績表』でオール5を取得。2405社中ダントツトップの超優良企業と評価されるまでになった。
共著者の衣田(きぬた)も、コピーライティングに救われた。
彼は大手企業でバリバリの管理職だったが、障害を抱えている子どものために、時間と場所が自由になるセカンドキャリアを求めていた。
しかし自分の経験が活かせる仕事が見つからず、今までの仕事とはまったく異なる整体師になることや、洋菓子店を開くことも検討した。
資本もかからず、習得も比較的簡単で、世界中どこにいても、いつどんな時間でも仕事ができることを条件に、ありとあらゆる職業を調査。その結果、最終的にたどり着いたのが、コピーライティングだった。
後からわかったことだが、この書く仕事は、衣田が今まで取り組んできた営業や営業企画の知識・経験が、そのまま活かせたという。
このように著者たちは、書くことをきっかけに、人生の危機を脱し、大きな未来へと転換できたが、今度は、救われた私たちが、この力を、必要な方たちに引き継ぐ番になったと考えている。