税務署が許さない「悪意ある納税者」とは?

――「悪意のある納税者」とは、故意に違法なことをして、税金を低く納めようとする人のことですよね。調査官は「悪意」をどう見抜くのでしょうか?

橘:それはですね。調査官は、すでに知っていることもあえて質問するんですよ。

――おお。それは怖い。

橘:前もって調べて裏を取っていて、「この人はこれを申告していないな」としっかり押さえてから、あえて知らないふりをしていろいろ質問するわけですね。そこで嘘をつこうものなら、「ああこの人、悪意があるな」と受け取られます。「あなた、これを知らないはずないでしょう。こっちは、この前銀行に行ったのも知っているんだからね」となり、悪意の判定をされてしまうんです。

――なるほど、、、! それは怖いですね。

橘:『ぶっちゃけ相続』で詳しく述べましたが、国は、みなさんが大体どのくらいの財産を所有しているか把握しています。国税庁には、国税総合管理(KSK)システムという巨大なデータベースがあり、全国民の毎年の確定申告(サラリーマンの場合は給与の源泉徴収票)の情報や、過去にどのくらいの遺産を相続したか等の情報が集約されています。
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――私たちの財布は筒抜けなんですね、、、。

橘:その情報をもとに、「この人はこれくらいの財産を持っているだろう」という理論値を計算します。税務調査に選ばれるのは、KSKシステムが弾き出した理論値と、実際に申告した遺産額に大きな乖離がある方です。

――「怪しい」「おかしい」と、ある程度確信をもって調査に来るわけなんですね。

橘:先ほどお伝えしたように、調査官に追徴税額のノルマは課されていませんが、大口で悪質な納税者の取り締まりができたときは、出世に好影響を及ぼすらしく、調査官が重加算税を課税したがっているように感じるときもあります。

――「悪意あり」とみなされると、大変なことになりそうです、、、。

橘:そこで、みなさんに強く推奨したいのが「税務署の影に怯えながら、故意に違法なことをするのではなく、合法的な相続税対策をしたほうがいい」ということと、「税務調査では嘘をつかずに誠実に対応したほうが、結果として良い結果になりますよ」ということです。

税務署が許さない「悪意ある納税者」とは?橘 慶太(たちばな・けいた)
税理士。円満相続税理士法人代表
中学・高校とバンド活動に明け暮れ、大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(「資格の大原」主催の法人税法の公開模試では全国1位)。大学卒業前から国内最大手の税理士法人山田&パートナーズに正社員として入社する。税理士法人山田&パートナーズでは相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手がけた相続税申告(相続手続)は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算500件以上。相続税の相談実績は5000人を超える。また、全国の銀行や証券会社を中心に通算500回以上の相続税セミナーの講師を務める。2017年1月に独立開業。現在、東京・大阪の2拠点で相続専門税理士が多数在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。「最高の相続税対策は、円満な家族関係を構築すること」をモットーに、依頼者に徹底的に寄り添い、円満相続実現のために日々尽力する。週刊東洋経済や女性自身、日本経済新聞、朝日新聞など、さまざまなメディアから取材を受けている。限られた人にしか伝えることができないセミナーよりも、より多くの人に相続の知識を広めたいという想いから、2018年にYouTubeを始める。自身が運営する【円満相続ちゃんねる】は、わかりやすさを追求しつつも、伝えるべき相続の勘所をあますところなく伝えていると評判になり、チャンネル登録者は6万9000人を超えている。2020年に刊行した初著書『ぶっちゃけ相続』は4万6000部を突破するベストセラーとなった。
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