経営者と海外に財産を持っている人は要注意!

――申告書をつくる段階で、「これは税務調査が来るな」とわかるのですか?

橘:結構わかるものですよ。いくつかポイントがあるんです。まず確実に「来る」と考えておいたほうがいいのは、「会社を経営していた人」と「海外に財産を持っている人」です。

――それはなぜですか?

橘:なぜか……はわからないんですけどね(苦笑)。でも経験上、来るんですよ。10割とはいいませんが、8~9割の確率で来ますね。とくに海外に財産を持っている人は9割くらい来ます。

――調査官も「追加で税金をとれる」という目論見で来るのでしょうか?

橘:調査官も上司から「絶対に行け」と言われているんじゃないかと思います。それくらいに高確率で来ます。商社勤めで長期間海外勤務だった方は、海外の銀行に預金が残ったままになっていて、ほかの家族が誰も気づいていないケースもありますから、相続のときには注意が必要ですね。

調査官もノルマ達成に必死?

――税務調査は交渉事であり、「税務署が認めるか、こちらが折れるか」の駆け引きもあると思います。駆け引きを有利に進めるためのポイントはありますか?

橘:実は調査官の中にも、「早く調査を終わらせたい」と考えている人が結構多いんですよ。調査官には、追徴課税する金額のノルマはないのですが、1年間に行わなければならない税務調査件数のノルマはあるそうなんです。つまり中には、「ノルマ達成のために仕方なく出向く調査」もあるわけです。

――意外です。もっとアグレッシブな印象を持っていました。

橘:調査官は「悪い納税者を罰する」という使命を持っている人間です。だから基本的には、「悪意のある納税者」にリソースを注ぎたい。だから、本当に手違いやうっかりで申告に漏れてしまっている「善意」のミスの場合は、「こことここを修正してくれればもう調査は終わりでいいですよ」とあっさり終わることが多いんですね。

――そうなんですね!

橘:「調査が来る」と、過度に心配する必要はないんです。ただ、その「こことここを修正してください」のロジックが全然通っていない追徴課税も中にはあります。その場合には、私は「おかしいでしょう?」と戦いますけどね。

――調査官も人間ですから、すべての発言が正しいわけではないのですね。