板挟みから脱する方法

 さて、C課長はどうすれば、このような状況から脱することができるだろうか。

①自分なりの判断基準となる信念を持つ
 1つは、自分の仕事について自分なりの判断基準となる信念を持ち、毅然と立ち振る舞うことだ。勝手が分からない新任マネジャーにとって最初は難しいかもしれないが、ある程度様子が分かれば、「こうあるべきだ。なぜなら…」というロジックを立てることはできる。まずは状況を素早く飲み込むとともに、ロジックを駆使して自分なりの拠り所となる結論や指針を持つことが望ましい。

 たとえば「ここは銀行から〇〇万円を借り入れをしてでも人材獲得という投資に回す方が得である。なぜなら…」というロジックを構築するのである。そのためにも、ある程度の経営視点や経営学の素養を持つことが望ましい。

②上司をうまく使う
 2つ目は、上司をうまく使うという発想を持つことだ。上司は自分の人事考課を行う人間であるため、どうしても遠慮しがちになり、下手に出るマネジャーも少なくない。しかし見方を変えると、上司もより上位の管理職から評価をされる立場である。マネジャーである自分をうまく使わないと、上司としても良い結果は出しにくい。そう考えると、上司とマネジャー自身は同じ船に乗るWin-Winの関係性にあるパートナーでもあるのだ。それは強く意識すべきだ。

 たとえば、「これだけの予算さえ確保いただければ、何とかここまではやります。その代わりというわけではないですが、加えて、部長がいまお困りの例の案件についてもお手伝いできます」などと言えれば、お互いにWin-Winの結果となるかもしれない。そうした構想力やしたたかさが物事を好転させることがある。

「彼/彼女の言うことを聞くと、自分も特になる」という認識を一度持ってもらえると、その後の仕事もかなり進めやすくなるものだ。

③上司の優先事項を理解する
 3つ目は、その上司の置かれている立場や社内的な責任、その時々の上司の優先事項を理解することだ。相手の視点に立ちその心象風景をイメージするということである。「ここで良い結果が残せると、D部長の立場も強くなりますね。例の部長が進めたかったプロジェクトもGOサインが出るかもしれません」など、その気になってもらう働きかけを意識すると効果的なことがある。

 微妙な方法は、いきなり直属の上長を通り越して、その上長に直訴することである。これはうまくいくケースもあるが、その後に禍根を残す可能性もある。上司の性格や、上司と自分に対する期待度合いの差などを慎重に検討することが望ましい。自分が苦しんでいるからと言って、あまりに安易な道を選ぶのは好ましくない。組織内における人間関係は長く続くものであるということも意識したい。